ドゥ・マゴで逢いましょう2004

2004年10月28日(木)


10月28日、木曜日。晴れ。有給休暇。

午前中はティーチ・インの書き起こしなどをして、昼ごろ出かける。今日もずっと六本木の予定。昼食は六本木ヒルズ内の老虎東一居で、餃子定食なる邪道なものを食べる。

夢遊ハワイ ◇ 夢遊夏威夷 ◇ Holiday Dreaming

映画祭6本目は、アジアの風部門の『夢遊ハワイ』。陳玉勲の助監督を務めたという、台湾の徐輔軍監督のデビュー作。

除隊間近のふたりの青年が、脱走兵を探すという任務つきの休暇を与えられ、その脱走兵の故郷へ向かうという、一種のロード・ムーヴィー。除隊=モラトリアムの終わりを目前にしたふたりが、束の間の休暇でいろいろな体験をし、成長して社会に出ていくという、いわゆる「少年が大人になる」ものでもある。とはいえ、困難な任務に懸命に立ち向かい、乗り越えていくといったような物語では全然ない。彼らは任務は適当にして休暇を楽しもうとし、映画は終始、のんびりしたムードに包まれている。だからといって、楽しいことばかりが起きるわけではない。昔好きだった女の子に再会すれば精神病で入院しているし、女の子をナンパすれば美人局まがいの目にあって金を脅し取られるし、脱走兵に逆に捕まえられて監禁されたりもする。全体をのんびりしたムードにしているのは、これらの出来事にいちいち落ち込んだりすることなく、楽天的に対応していく青年たちの態度である。私自身、楽天的な性格なので、このふたりの態度には大いに共感するところがあって、これは監督の人生観を反映しているのだろうと思いながら観ていた。ところがティーチ・インを聞いたら、監督は人生がとてもつらい人のようである。謎である。

かなり重度の精神病の女の子と、いささか心を病んでいる気味の脱走兵の青年を加えた彼らの休暇は、実際にはこうはいかないだろうという意味で、一種のファンタジーである。しかし、エピソードを淡々と積み重ねながら、きわめてナチュラルに描かれている。説明は極力排されており、観客の想像に委ねられるところも多い。夢のハワイの空気(ハワイとは似ても似つかぬ、東部の鄙びた海岸なのがまたいい)の下に大きな氷山が隠れていて、悲しいこと、つらいこと、切ないこと、要するに人生の機微みたいなものが、氷山の一角としてちょこちょこっと頭を出している。ハワイの空気に包まれてとても心地よく映画を観終わるけれど、時々氷山の一角を思い出して、ちょっとしんみりした気分になる、そんな映画である。

上映後は、徐輔軍監督、出演者の楊祐寧、黄鴻升、張釣甯、黄泰安をゲストに、ティーチ・インが行われた。人気アイドルだという主演の楊祐寧(はずかしながら知らなかった)は、ちょいと赤木圭一郎という雰囲気だ。名前もトニーだしね。

ティーチ・イン詳細


胡蝶 ◇ 胡蝶 ◇ Butterfly

映画祭7本目は、アジアの風部門の『胡蝶』。初めて観る、香港の麥婉欣監督の映画である。

平穏な家庭生活を捨てて同性の恋人との生活を選ぶヒロインの選択に、天安門事件から香港基本法第23条関連法案反対デモへと至る香港人の選択を重ねて描いたもの。映画のかなりの部分が、ヒロインの高校から大学時代の恋愛の回想であり、その部分はとても鮮やかで、ふたりの少女も印象的である。それに比べて現在の部分の印象が薄い。田原演じる女性はなかなか魅力的なのだけれど、何といってもヒロインを演じる何超儀がよくない。もともと私はこの人があまり好きではないが、ワイルドな顔や髪形に、高校教師風のエレガントな服装という妙な取り合わせが、ますます魅力をなくしている。そのせいもあってか、彼女の苦悩とか痛みとかがあまり伝わってこなかったし、過去を克服し、自分の道を自分で選ぶことによって、彼女が変わっていくさまもあまり感じられなかった。ヒロインの過去と現在のつながりや、ヒロインの個人的な出来事と香港で起きた政治的な出来事とのつながりも、もう少しがっちりと絡み合うように描けていたらよかったと思う。

上映後は、麥婉欣監督、主演の田原をゲストに、ティーチ・インが行われた。田原は髪型のせいか、映画とはかなり違う雰囲気。浅丘ルリ子(もちろん若い頃の)みたいでかわいい。襟川クロの司会は最悪。この映画と直接関係のないおしゃべりが多いうえに、司会者としてティーチ・インを仕切れていない。映画の内容に異を唱える質問者が二人もいたが、たとえ自分の意見と違っても、司会者としては中立的な立場に徹するべきであり、説き伏せようとするような発言はすべきでない。そのうちの一人はかなり長く質問時間を取っていたが、適切に終わらせるようにすることも、司会者の重要な仕事である。

ティーチ・イン詳細

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夕食は、テイクアウト専用の鬚鬍張魯肉飯で弁当を買って食べる。いつでもこれがテイクアウトできると思うと、六本木で働く人が羨ましい(渋谷で働く人はもっと羨ましいが)。



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作成日:2004年12月3日(金)
更新日:2004年12月6日(月)