西門町で逢いましょう

1996年1月1日(星期一)


新年快樂

龍山寺

1996年1月1日、月曜日。台北。晴れ。台北で迎える1996年の元旦は、格別何もない、穏やかな祝日の朝である。

いつもは初詣など行かないことは忘れ、龍山寺へ初詣に行く。龍山寺はいつものように混雑している。タダでもらえる長い線香に火をつけ、中華風お祈りの格好を楽しむ。


光華商場

午後は、台北の電脳街の代名詞、光華商場へ行く。光華商場は、新生南路と八徳路が立体交差する光華陸橋の下にある。このあたりには、ほかにも國際電子廣場などの電脳ビルやコンピュータ屋が並ぶ。光華商場のパソコンショップはほとんどジャンク屋だという噂だが、今日の目的は電脳ではなく、CDである。光華商場は、パソコンショップのほかにレコード屋や古本屋もあり、なかなか怪しい雰囲気でよい。

光華商場内のCD屋、光華流行名店でCDを数枚買う。北京語・台灣語のCDはほとんどが1枚NT$290(¥1148)。北京語のCDは香港でもたいてい手に入るのだが、やはり物価に比例するのか、台灣の方が安いようだ。しかし、ほしいものを目の前にすると抑制できない性格のため、香港でかなり買ってしまった。重い鞄をひきずってきた昨日の苦労を思うとむなしい。


美美が泣く公園(その1) [注1]

“愛情萬歳” [注2]

大安森林公園
(後日撮影)

夕方、光華商場から歩いて大安森林公園(七號公園)へ行く。大安森林公園は、台北市南部の大安區にある、新しくて大きな公園だ。“愛情萬歳”のラストで、美美(楊貴媚)がベンチに座って泣き続けるところである。

“愛情萬歳”は、蔡明亮監督の第2作だ。蔡明亮は、撮った映画はまだ2本だが[注3]、侯孝賢、楊徳昌と共に、台灣映画界の御三家である。現在の台灣映画のレヴェルからいえば、台灣を代表する監督であるということは世界を代表する監督でもあるということだ。

“愛情萬歳”は、台北に住む3人の孤独な男女の物語である。物語の場所独立性と、流れる空気の場所固有性という観点からは、ほぼ同時期に作られた王家衛の“重慶森林(恋する惑星)”[C1994-38]と共通するものがある。ここで描かれるのは、現代の都市に生きる人々の普遍性をもった物語であり、台北や香港である必然性はない。一方で、背景としての台北や香港の街の空気は、ただの背景以上の存在感をもってフィルムの上にある。主役といってもいいくらいに。結果として、“重慶森林”は香港でなくてはならないし、“愛情萬歳”は台北でなくてはならない。

たどり着いた頃にはもう真っ暗で、散歩気分ではなかった。美美は、斜面状にたくさん並んだベンチのひとつで泣いていたが、ここはどうやら野外ステージの観客席らしい。森林公園という名前ではあるが、まだ植えられたばかりの若い木なので、木陰や茂みはほとんどない。暗くなってもカップルや浮浪者がいるわけでもない、淋しい公園だった。



[1] タイトルからのリンク
タイトルをクリックすると、[as films go by -台灣篇-]の関連するページを別ウィンドウで表示する。以下同様。
[2] 映画名からのリンク
各タイトルの下に、関連する映画名を付す。この部分をクリックすると、同じ映画に関連する次のタイトルにジャンプする。
[3] 蔡明亮の映画の本数
この旅行の時点で2本。旅行記執筆時(1997年6月)には第3作“河流(河)”も撮っている。その後の作品も含め、フィルモグラフィは蔡明亮監督作品参照。

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作成日:1997年6月23日(月)
更新日:2004年5月29日(土)