爺爺不見了


2003年12月14日。日曜日。
晴れ。少し寒い。

鎌倉市→(エアポート成田)→成田空港→(CI017)→中正機場→(大有巴士)
台北市中正區→(捷運)→中山區→中正區

車輪燒 日式家屋 台北市政府警察局中正第一分局 華山藝文特區
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ひとつ5元の車輪燒。 廃虚のような日式家屋。 台北市政府警察局中正第一分局。『ダブル・ビジョン』ロケ地。 華山藝文特區。菸酒公賣局台北第一酒廠の跡地。
7-ELEVEN統聯門市 ‘日本映畫巨匠影展’のポスター 侯孝賢監督 花枝丸
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7-ELEVEN統聯門市。『7-ELEVENの恋』ロケ地。 ‘日本映畫巨匠影展’のポスター。 台北之家前で見かけた侯孝賢監督。 欣葉の花枝丸。

久しぶりに贅沢な午前便である。タートルネックのニットのセーター、ジーンズ、コットンのブルゾン。台灣の寒めの日を想定した格好は、鎌倉の朝5時には寒すぎる。電車までの辛抱だと思っていたら、日曜早朝の横須賀線はガラガラで、八甲田山のように寒い。車内はずっとすいたままで、暖房はずっと弱いままで、死の行軍は成田空港まで続いた。

中華航空(CI)107便(定刻:9:40-12:30)は、少し遅れて10時ごろ動き出す。誰もマスクを着用しておらず、ゲートはそこそこ賑わっていて、機内はほぼ満席。しかし、入国時に提出するSARS対応の健康調査票はまだあって、やはりSARSの季節は終わっていないのだと思う。私たちの後方には謎の若者ツアーがいる。「到着したら小籠包の有名な店で昼食」、「そのあとオプションで足ツボマッサージ」などと大声で予定を伝達したり、耳が痛くなったとかなんとか言っては客室乗務員を呼びつけたり、なにかとうるさいが、どこかほほえましい。「台灣の歴史を勉強してきた」と語っていたのにも感心する。1時頃に中正國際機場に到着。

いつもの大有巴士に乗ろうとすると、J先生が「大有は時間がかかるから別のにしよう」と言う。しかしすぐに「でも檳榔小姐がよく見えるから大有にしよう」と言い、結局大有巴士で台北へ向かう(100元=333円注1)。昼間の檳榔小姐は、ネオンがないぶんインパクトがない。台北は、寒いというほどではないが、特に暖かくもなかった。台北車站前の屋台で車輪燒写真1を買う(1個5元=17円)。日本の今川焼である。

最近の定宿、華華大飯店にチェックインし、最近の定銀行である三越裏の中國國際商業銀行(ICBC)でお金を下ろす。最初の目的地は、忠孝路と中山路の交差点に面した台北市政府警察局中正第一分局写真3。監察院や行政院のあるこの交差点は、近代建築と憲兵と警官の宝庫である。中正第一分局は丸い外観が特徴的だ。『ダブル・ビジョン(雙瞳)』C2002-22で黄火土刑事(梁家輝)が勤めている警察署映画だが、事件は信義區や淡水(台北縣淡水鎭)で起こり、ここの管轄とは思えない。きっとこの建物が撮りたかったのだろう。

そのまま歩いて、捷運の忠孝新生站の前にある7-ELEVEN統聯門市へ写真5。『7-ELEVENの恋(7-eleven之戀)』C2002-30の舞台になった店だ。ローファット牛乳とおにぎり、ではなく缶コーヒーを買う(20元=67円)。映画のような可愛い店員はいなかったが、聞きなれた‘歓迎光臨’‘謝光臨’が心地よく響く。電視劇“雨衣”のポスターが貼られていたところには、少年が2人座っている。缶コーヒーを飲みながら彼らがいなくなるのを待つ。

映画でも店内から見えていた忠孝新生站の入口を下りる。さっき銀行で下ろした1000元札を、J先生が切符売り場の両替機に入れ、一瞬にして山のような50元硬貨に変わる。100元札にしたかったらしいが、切符を買うための両替機なのだから、硬貨が出てくるに決まっている。せっかく悠遊卡で重い財布にさよならしたのに。

中山站まで移動して、前回から必須訪問ポイントに加わった台北之家注2公式へ行く。前回はDVDを買うかどうか迷って、リージョン・コードが書いてないので買わなかった。今回は、「かからなければプレイヤーを買う」という覚悟注3で来たものの、特に目新しいものは見あたらない。

ところで、今年は小津安二郎生誕百年公式である。東京では、フィルムセンターで全作品が上映されているし、誕生日であり命日でもあるこの12日には国際シンポジウムも開かれた。ここ台北でも、小津安二郎全上映を含む‘日本映畫巨匠影展’が開催されている(少ないが、成瀬巳喜男の映画も上映される注4のが嬉しい)。その会場のひとつがこの中の映画館で、まわりには幟やポスターが溢れている写真6。台北で『麦秋』C1951-02を観る、冬の台北で『東京暮色』C1957-05を観る、なかなか渋い。『好男好女』C1995-11のように『晩春』C1949-01を観るのもいい。しかし残念ながら時間がない。百年紀念出版の“尋找小津 一位映畫名匠的生命旅程B675注5(350元=1166円)を買って帰ろうとすると、台北之家の前に侯孝賢監督が立っている。台灣で侯孝賢監督を見かけるのはこれで二度目。縁があるに違いない。シャイな私たちはサインも求めず、そのくせしっかり隠し撮りする写真7。予想外の出来事に喜びつつも、「どうせなら、台灣ではまだ会ったことのない張作驥や蔡明亮に会えればいいのに」などと勝手なことを言いながら台北之家をあとにする。

夕食は新光三越南西店の欣葉。初日から贅沢だ。花枝丸写真8、菜脯蛋、樹子鶏丁、清炒苦瓜、台灣生啤(1029元=3427円)。まわりの客を観察すると、台灣人にとってここは家族で来る店のようだ。日曜の夜でもあり、おばあちゃんをはじめ一家勢ぞろいで食事をしている家族もある。一方、若い女性同士やカップルの客はほとんど日本人だ。

食後は新光三越内の法雅客(fnac)でDVDを物色。中央電影の過去の作品がかなりDVD化されていることもあり、ほしいものを手にとっていくとかなりの数になる。財布と相談した結果、“愛你愛我(檳榔売りの娘)”(450元=1499円)、“看海的日子(海をみつめる日)”C1983-40(149元=496円)、“無言的山丘(無言の丘)”C1992-79(149元=496円)、“客途秋恨”C1990-29(99元=330円)、“千言萬語”C1999-28(198元=659円)、“[虫可]女(海辺の女たち)”C1964-24(119元=396円)を購入。このように、値段は100元を切るものから500元を超えるものまでさまざまだ。1000元でも日本より安いのだが、500元を超えると気分的に手が出ない。

捷運の地下商店街を歩いてホテルに帰る。今日の歩数は20794歩。わりに快調である。半日ほど人々の服装を観察した結果、ほとんどの人が私たちよりも厚着で、東京の服装とあまり変わらなかった。コートはウールやダウン・ジャケットが多いし、マフラーもかなり一般的。コートの下も重ね着している人が多い。暖かい時期が多い分、冬は寒く感じられるだろうし、暖房がなかったり冬でも冷房がかかっていたりするせいもあると思う。一方、冬服を着たいから、冬らしい格好をしたいからという理由で厚着をしている人も多いように思った。

夜のニュースの主役はフセイン元大統領。ついにアメリカ軍に捕まったらしい。総統選挙の話題を脇へ押しやって、急に老けこんだように見えるフセイン元大統領の顔が画面を独占していた。


1]台灣元から日本円への換算
citibankからの引き出しレートの平均である1元=3.33円で計算し、小数点以下を四捨五入(以後同様)。
特に明記しないかぎり、交通費、入場料は1人分、食費は2人分、宿泊費は1部屋分である。
2]台北之家
ここの名称は、“台北之家”なのか“光點台北”なのか“台北光點”なのかよくわからない。
3]台灣で買ったDVD
今回買ったDVDは、すべて家のプレイヤーで再生できた。
4]日本映畫巨匠影展で上映される成瀬映画
“浮雲”C1955-01、“晩菊”C1954-04、“山之音(山の音)”C1954-05、“上樓梯的女人(女が階段を上る時)”、“亂雲(乱れ雲)”C1967-04の5作品。
5]“尋找小津 一位映畫名匠的生命旅程
巻末の‘相關網站(関連サイト)’の中に、このサイトの「小津安二郎 参考文献」と、J先生のサイト「作ってはみたけれど...」(‘我做了,但……’と訳されている)が載っていた(驚きですねえ)。この本の発行人は侯孝賢である。

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作成日:2004年1月12日(月)
更新日:2004年6月6日(日)