イエイエ上海 page 9

1999年7月31日(星期六)


1 金門大酒店
2 新城飯店
3 天蟾舞台
4 新世界前の歩道橋
5 南市
6 南市

7月31日、土曜日。上海。晴れ。

今日は上海で過ごす最後の日。午前中は、旧共同租界の行き残したところを片づける。

人民廣場の地鐵の出口を出て、すぐ目の前の新世界城に入る。入口にはビニールの暖簾のようなものがかかっている。地面まで届く部厚いビニールに縦に切り目を入れたものだ。おそらく、コストのかかる自動ドアに代わり、空調効果を妨げないで人の出入りをスムーズにするための工夫だと思う。上海では時々見かけるものだが、これから連想されるものがある。“堕落天使”[C1995-50]で黎明と李嘉欣が逢うカフェの入口である。現実のこのカフェ、My Coffeeにはそんなものはない。空に翻る服、ビニールの暖簾。王家衛=張叔平的空間は、多分に大陸のイメージに触発されたものであろう。

新世界には9時の開店と同時に入ったが、日曜の午後の伊勢丹のように混雑している。トイレには行列がないのが不思議である。

華安大厦China United Apartments(現・金門大酒店)(写真1)や國際大飯店Park Hotel(現・國際飯店)、大光明大戲院The Grand Theatre(現・大光明電影院)や新光大戲院Strand Theatre(現・新光影藝苑)、金城大戲院Lyric Theatre(現・黄浦劇場)など、租界時代からのホテルや映画館を見る。大光明大戲院は、1945年に李香蘭のリサイタルが開かれたところだ。『中華電影史話』[B231]には、「このリサイタルの成功は、日本敗戦直前に打ちあげられた、最も華麗な花火であったと言ってよい。」とある。

ショッピングは好きな方だが、旅先での買物は気が重い。一般に、気に入ったものを見つけるには信頼できる情報を入手するか、時間をかけて足を棒にするしかなく、旅先では困難である。だが、中國へ行ったからには何か中国っぽいものを手に入れたかった。日本では大中へ行けば手に入るが、中國では案外難しい。中國は街中が大中だと思ったら大間違いである。妥協策として友誼商店に行く。大型バスで太った西洋人の団体が乗りつける。店員は「何ほしいか?」と日本語で聞く。あまり楽しいところではない。髭剃りをする床屋さんと客の泥人形のセット(88元=1299円)などを買った。

和平飯店には上海で唯一のCITIBANKの支店がある。これまで中國銀行や中國工商銀行のATMで人民元を入手していたが、通りかかった機会に下ろしてみた。出てきたところに声をかけてくる愚かな闇両替屋。

工部局Shanghai Municipal Council(現・老市府大樓)、都城飯店Metropole Hotel(現・新城飯店)(写真2)、Hamilton House(現・福州大樓)、大北電信ビル(現・上海市公交総公司)、天蟾舞台[tian1 chan2 wu3tai2](写真3)などを見る。Metropole Hotelは、阪東妻三郎が、大映と中華電影聯合(華影)との合作映画、“春江遺恨”(『狼火は上海に揚る』)[C1944-8]に出演した際に滞在したホテルである。Hamilton Houseは三階に中華電影の社屋が置かれたビル、大北電信ビルは聯合通信上海支社があったところである。

再び新世界へ。ここの美食城(フードコート)では、‘百年老店’みたいな有名店の味が気軽に味わえる。新雅粤菜館の鶏、茄子、黄瓜などを食べ、青島[口卑]酒で午前中の疲れを洗い流す。新雅粤菜館は、かつて新雅茶室として虹口にあったところである。

食後は新世界内のコーヒー・ショップへ行ってみる。ちゃんとしたコーヒーが飲めるが、ふたりで34元(=502円)の昼食の後の[口加][口非]は1杯30元(=443円)。窓の下には、新世界前の円形の歩道橋がきれいに見える(写真4)。上海の街は工事中の建物が目立つ。

午後は、華界の中心とも言うべき南市[nan2 shi4](写真5)(写真6)へ行く。不規則に張り巡らされた狭い路地は、下は露店、上で洗濯物で埋めつくされている。椅子を持ち出して寛ぐ人もいれば、買い物をする人もいる。私的空間のようでもあり、公的空間のようでもある。租界ばかりが取り上げられがちな上海にあって、南市は最もわくわくする場所であり、同時に他所者であることの居心地の悪さを認識させられる場所でもある。

豫園近くの松雲樓で夕食。松鼠桂魚を食べてみる。悪くはないが、餡かけは苦手なのでまた食べたいものでもない。その他、青炒仔鶏、開洋冬瓜湯、生炒時菜、初めての上海[口卑]酒の生。最後の晩餐は、全部で211元(=3114円)と高価なものになった。


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作成日:2000年10月24日(火)
更新日:2001年4月4日(水)