1997年11月2日(日)
ドゥ・マゴで逢いましょう '97
11月2日日曜日。晴れ。
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迎春閣之風波 ◇ The Fate of Lee Khan
今日の1本目、通算4本目は、胡金銓監督の「迎春閣之風波」である。今回唯一の東京国際ファンタスティック映画祭の作品だ。
舞台挨拶なしなので、開場30分前くらいに渋谷パンテオンのある東急文化会館に行く。階段にできた列は、すでに5階あたりまで延びている。顔ぶれは格闘技系男性が中心。開場後、たこ焼きと今川焼きというジャンクな昼食を食べる。
トーク:錢行
本作品は、今年の1月に突然亡くなった胡金銓の追悼上映である。例によって趣味の悪い派手な演出で、ファンタのプロデューサー、小松沢氏が登場。もうひとり、北京語、広東語の通訳として、映画祭ではおなじみの錢行氏(現NHK勤務)がゲストとして登場する。彼は、1996年のゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭の審査員として来日した胡金銓に、山田宏一氏、宇田川幸洋氏のインタビュー(「キン・フー武侠電影作法」のためのもの)の通訳として同行したとのことで、そのときの思い出を語ってくれた。幼い頃炭坑で過ごし、炭坑の町夕張に大きな関心を寄せていたこと、夜中にひとりでジンギスカンの店に行き刺し身を予約したこと、その店の若い経営者と意気投合して「きんちゃん」と呼ばれていたこと、山田宏一氏のインタビューはとりわけ楽しいと語っていたことなど。
映画について
元への反乱軍とそれを鎮圧しようとする河南王が、迎春閣という宿屋で対決するアクション映画。迎春閣の従業員や客が皆どちらかのスパイであり、それが徐々に明らかになっていくのがおもしろい。その中に迎春閣の給仕女に扮した4人のきれいどころがいるのもよい。設定などは「血斗竜門の宿」に似ており、アクション映画としては「血斗竜門の宿」の方がおもしろい。
山中傳奇 ◇ Legend of the Mountain
今日の2本目、通算5本目は、やはり胡金銓の「山中傳奇」。こちらはシネマプリズムでの胡金銓追悼上映である。
時間があったので、ドゥ・マゴでお茶する。残念ながら、有名人は見かけなかった。夕食のおにぎりを買って、会場の渋東シネタワーへ。
トークショー:張之亮、宇田川幸洋
上映に先立って、香港の映画監督、張之亮(「女ともだち」が上映されるため、ゲストとして来日中)と、映画評論家の宇田川幸洋氏のトークショーがあった。まず、宇田川氏から、胡金銓監督の突然の死のこと、それに対する各国のマスコミの反応、台北での葬儀の模様などが伝えられる。日本のマスコミは反応が遅くしかも扱いが小さかったこと、葬儀が盛大だったことなど。
続いて、張之亮監督が胡金銓の印象や思い出などを語る。話は北京語で、この後上映されるフィルムに英語字幕がないためか、英語への通訳はなし。張之亮監督が最後に白いスクリーンに向かって拍手を贈っていたのが印象的だった。
映画について
一見の価値のある作品ではあるが、純粋に好みの点からいってちょっと苦手な映画である。まず第1に、長い。第2に、ゴーストものである。私はゴーストものが苦手で、「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」などまったく面白くなかった。第3に、自然の描写によって人間(妖怪)の行為や心理を喩えるというのも好きではない。
迫力の美女妖怪、徐楓が太鼓を叩くと敵が苦しむシーンはすごくおもしろかったし、若くて可憐な張艾嘉もよかったが、もっとコンパクトに撮れないものだろうか。やはり胡金銓はアクションものがよい。
キッスで殺せ<完全版> ◇ Kiss Me Deadly
今日の3本目、通算6本目は、Robert Aldrichの「キッスで殺せ」。シネマプリズムのウィンドウ・オブ・ワールド・シネマという部門の1本。今回観る唯一の西洋の映画である。
「山中傳奇」が終わってロビーに下りてくるとすでに長蛇の列。夜9時からの上映であるうえに日本語字幕なしということで、すいているのかと思ったら満席だった。
映画について
監督の個人蔵のプリントから幻のラストシーンが見つかったということで、そのシーンを入れた完全版の上映。しかし、日本公開時には完全版だったという話もあって、なんだかよくわからない。フィルムノワールの傑作ということだが、そんなにいいとは思わなかった。英語が聞き取りにくく、細かいところがわからないせいもあるとは思うけれども。あれが原子力兵器だというのは…。冒頭やエンディングはかっこいい。
疲れて渋谷駅のホームをとぼとぼ歩いていたら、若い女の子と一緒の小松沢氏とすれ違った。女の子のほうは楽しそうにはしゃいでいたが、小松沢氏はお疲れのようだった。
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