1997年11月9日(日)
ドゥ・マゴで逢いましょう '97
11月9日日曜日。晴れ。
◇◇◇
鏡 ◇ Aineh ◇ Mirror
今日の1本目、通算17本目は、Jafar Panahi監督の「鏡」。これもシネマプリズムの1本。アジア映画ではあるのだが、アジア秀作映画週間ではなく、ヤングシネマ受賞監督作品というパートだ。Panahi監督のヤングシネマ受賞作は、一昨年ゴールド賞を受賞した「白い風船」である。これがなかなかよかったので、今回も観に来たわけだ(このパターンが多い)。
開場時間10時15分の30分前くらいに文化村に行くと、建物自体が開場しておらず、まず外に並ぶ。10時を過ぎると、内部に場所を移してまた並ぶ。かなり盛況である。
映画について
小学校2年生の女の子が、放課後迎えに来るはずのお母さんが来なかったので、ひとりで家に帰ろうと奮闘する話。に見えて、実はそのような映画を撮っている途中で主演の女の子が演技をやめてしまい、ひとりで家に帰ろうと奮闘する話。これはあたかも撮影中のハプニングのように描かれているが、もともとそういう脚本だったとのこと。ヤラセと知ってて観ると素直に驚けず興ざめする部分もあるが、子供を使った街中での撮影ということで、どこまでが演出で、どこまでがそうでないかの境界が曖昧であり、なかなか興味深い。交通渋滞がひどいテヘラン市内の風景や、生々しい街の音が魅力的だ。
ふつう子供映画というと、「子供は実は本質を見抜いている」といった子供=賢い系や、「大人が忘れてしまった純粋な心を持っている」といった子供=純粋系が多いのだが、この監督の映画では、子供はあくまでも愚かであり、決して信用しちゃいけないという感じでおもしろい。その分観ていてイライラするのだけれども。主演は前作と同じ女の子だが、すでに醜くなりつつあった。
女ともだち ◇ 自梳 ◇ Intimates
今日の2本目、通算18本目は、張之亮監督の「女ともだち」。これもシネマプリズム(アジア秀作映画週間)の1本。
鉄鍋餃子などをたらふく食べてから、会場のル・シネマへ。香港映画ファンの多くにとって、今日のメインは「ラヴソング」である。「女ともだち」が終わってからでも間に合うのだが、黎明の舞台挨拶目当ての人はそうはいかない。私は香港で観たし、VCDも持っているし、日本公開も決まっているし、黎明のファンでもないのでパスしたが、おそらくこの理由により「女ともだち」は比較的すいていた。
映画について
元娼婦の実業家の妾、玉環と、親の都合による結婚を拒否して「非婚女性の家」に入った意歡の愛(?)と友情の物語。戦前の楊采妮(意歡)の姿が、同じように恋愛に傷つく現代の女性、李綺紅と重ねあわせて描かれている。ふたりを助け、見守っていく玉環を、若い頃は劉嘉玲が、年取ってからは歸亞蕾が共に好演している。
けっこうよかったのだが、張之亮はかつて「黄昏のかなたに」という傑作を撮っているので、このくらいでは許してあげない。現代の部分と過去の部分が切り替わるところなどわざとらしいし、もうちょっとすっきりと作れないものだろうか。
本映画祭3度目の登場となる趙文瑄(友情出演)は、あいかわらず魅力がない。けっこういい男なのに、どうしてこういつも魅力のない役なのだろう。
藍月 ◇ Blue Moon
今日の3本目、通算19本目は、柯一正監督の「藍月」。これはインターナショナル・コンペティションである。
会場は同じル・シネマなのだが、まだ行列ができていなかったので、パスティーニ(?)で夕食を食べてから並ぶ。「ラヴソング」とまともにぶつかるためか、「女ともだち」よりさらにすいていた。しかし、客席に「青春のつぶやき」の曾靜小姐を発見!
映画について
台北を舞台にした、2人の男性のどちらかを選ぶことを求められている女性の物語。この映画の見どころのひとつは、5巻からなる映画をどう入れ替えてもだいじょうぶなように作られているということ。実際、2回目の上映である今日は、1回目とは順序を変えてあるらしい(これを目当てに2回観に来ている人もいた)。もうひとつの見どころは、台湾のアイドル、蘇慧倫が主演していること。
映画は、とてもよかった。空気が感じられる映画である。主演の蘇慧倫もナチュラルでよい。ぜひ違う組み合わせも観てみたい。
柯一正の映画を観るのは初めてである。俳優として出演しているのは幾つか観たことがあって、「ソウル」や「超級大国民」ですごく渋い役どころで好演していたのは知っているのだが(「カップルズ」ではぜんぜん渋くなかった)。観たことのある監督の作品の場合、当然観る前からある程度以上の期待があるわけで、よくても期待通りで、感動は少ない。この映画もそれなりの期待はあったわけだが、未知数だったので、喜びも大きい。すごく嬉しい気分で帰途につくことができた。
■
←11月8日
■
↑ドゥ・マゴで逢いましょう'97
■
→11月10日
■
◆ 映画祭日和 ◆ ホームページ ◆ Copyright © 1997-2004 by OKA Mamiko. All rights reserved. 作成日:1997年11月12日(水) 更新日:2004年12月15日(水) |