第17回東京国際映画祭

『ビヨンド・アワ・ケン』ティーチ・イン

開催日 2004年10月30日(土)
会場 VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ6
ゲスト 彭浩翔(監督)
鍾欣桐、陶紅、呉彦祖(出演者)
司会
広東語-日本語通訳
北京語-日本語通訳
英語-日本語通訳 松下由美


司会(日本語):では、みなさまよりご挨拶をいただきたいと思います。

彭浩翔(広東語):こんばんは。私は彭浩翔です。映画を観てくれてどうもありがとうございます(ここまで日本語)。みなさん、『ビヨンド・アワ・ケン』を観てくださってどうもありがとうございました。資金的な問題もあり、この映画は14日間で撮りあげました。私の過去の2本の作品を観てくださった方々は、今回の作品が私の今までの作風とは違うと思われたと思います。ただ私は、コメディ以外にも撮れるということを見せたかったし、それ以外のものを撮りたいと思ったので、今回のこの映画を作りました。実は、このストーリーは私の友人の身に本当に起きたことです。撮影中に、出演者の呉彦祖からもほかの女優さんからも、「恋愛中にこんな写真を撮ることが本当にあるんですか」と聞かれましたが、私自身はそんなことはしません。もしインターネットに私の写真が出ていたら、私が出したのではなく、女性側が出したものだと思ってください。

呉彦祖(英語):実は僕は今日初めてこ映画を観ましたが、嬉しい驚きに包まれました。撮っている間は本当に時間がなくて、駆け足で撮りました。でも本当に楽しい経験で、自分のルーツであるインディペンデント映画の原点にまた戻った感じでした。僕は、白馬に乗ったすてきな王子様というような役柄が多いのですが、そういう今までやってきた役とは全く逆の役柄だったので、そういった面でも楽しかったです。でも別にケンは悪いやつじゃないですよね。あくまでもどういう角度から彼を見るかだと思います。また、観るのが男性か女性か、若いのか年とっているのかによっても、見方がかなり異なると思います。最後にどんでん返しがあるのがまたおもしろいですよね。
◆この映画をなぜやったかというと、彭浩翔監督だからに尽きると思います。実はずっと彭浩翔監督と組みたいと思っていました。ただこの役を貰ったとき、ケンというイヤな野郎が本当に好きになれなかったんですよ。でも何日かして、悪くないなと思い始めて、逆に女の子たちは嫌いにならざるを得ませんでした。今観た感想でも、やはりケンは好きですね。女の子よりは悪いやつじゃないと思います。でも本当にいい映画で、どういう角度から見るかによってその都度見方が変わるのが、この映画のいい点だと思います。本当に今日観る機会があってとても嬉しいです。私と同じようにみなさんも喜んでくれたら嬉しいのですが。

彭浩翔:この映画を撮るにあたってキャスティングを考えたとき、ケンの役に最初に考えたのは、実は呉彦祖ではありませんでした。プロデューサーとの間では、私自身がやってもいいと言っていました。そのときプロデューサーに止められたんですが、今日映画を観てみて、プロデューサーのほうが正しかったなと思いました。

鍾欣桐(広東語):私も今日初めてこの映画を観ました。撮影中はいろんなシーンをとにかくたくさん撮ったし、いろんなものを食べたし、相当な距離を走りました。相当労力を使って撮って、最後に監督がどのように編集されるんだろうと楽しみにしていたんですが、今日見せていただいて、本当に楽しいいい映画だと思いました。私にとって初めてのラヴ・ストーリーで、一生懸命演じました。でも本当にいろんなものをたくさん食べさせられて、相当な距離を走らされたので、撮影では非常に疲れました。みなさんに喜んでいただけたらいいと思います。

陶紅(北京語):実は私も今日初めてこの映画を観ました。とてもよくできていると思います。以前監督が、生活感あふれるリアルな作品を撮りたいとおっしゃっていたんですが、そのとおりになっていたと思います。私自身も、観客席に座ってこの作品を観て、本当に大笑いしてお腹が痛くなってしまいました。監督が表現したいと思っていたいろいろなことが実現できていると思います。監督からお話を伺ったときに、何重もの構造になっている作品だと思いましたが、作品が成功しているのは、それがうまくいっているからだと思います。もう一度あらためて、みなさんに今回この映画を観に来てくださったお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。

彭浩翔:ここでもう一人お礼を言いたい方がいます。私と一緒に脚本を担当してくださった黄さんです《観客席の黄詠詩さん、立ち上がっておじぎをする》。彼女がこの映画に参加してくれて本当によかったと感謝しています。もともとロマンティックなラヴ・ストーリーを撮りたいと思っていたんですが、最初撮り始めたときはちょっとピンク系の画面ばかりだったので、彼女を驚かせてしまったと思います。それでも私に10ヶ月間つきあって、脚本を仕上げてくれました。ここでもう一度お礼を言いたいと思います。どうもありがとうございます(日本語)。

司会:本日の上映はワールド・プレミアということで、ここにいられることをとても嬉しく思います。

観客1(日本語):今日はとても楽しく観させていただき、ありがとうございました。質問は監督と女優さんお二人にお聞きしたいんですが、髪形が、ケンと出会う前はお二方とも染めていなかったのに、その後このへんだけ色をつけているのは何か意図があったんでしょうか。またあの色にしていたのは監督に何か意図があってやっていたのでしょうか。そしてその髪形を女優さんは気に入っていましたでしょうか。

彭浩翔:実は、鍾欣桐が髪を染めたのは彼にふられてからなんです。ふられる前は髪を染めていませんでした。ふられてから髪を染めて、眼の矯正手術をして眼鏡もはずしました。これは、ふられる前とふられたあとを分けているんです。彼女がふられたあと、視力の矯正手術をして眼鏡をはずしたのは、ふられたことによってもっと社会をよく見る目を持たせたかったからです。社会や愛情を見極める目を持たせたかったのです。見極める目を持ったことによって、彼女は見なくていいものも見てしまったのです。

鍾欣桐:私からもひと言お答えします。ずっと髪を染めていなかったので、今回映画の撮影で染めて、けっこう気に入っていました。

陶紅:できれば監督が語ってください。私もどうしてこの色にしたのかよくわかりません。

観客2(日本語):監督と鍾欣桐ジリアンさんにお聞きしたいと思うんですけれども、監督は鍾欣桐さんを今回キャスティングするにあたって、かなりこれは賭けだったと思うんですけれども、彼女の女優としての魅力を教えていただきたいのと、逆に鍾欣桐さんがTwinsのイメージを壊すようなこういう役をオファーされたことによって、どう思われたかということについて教えてください。

彭浩翔:私の鍾欣桐に対する印象は、たぶんTwinsの映画をいくつか観られた方はご存じだと思うんですが、ふたりの中では彼女のほうがおとなしめですよね。もうひとりのほうがちょっと明るい感じです。彼女は、あまり自己主張をしないし、人からもそれほど注目されないほうだと思うんです。ただ鍾欣桐はひとりになると、Twinsでふたりでいるときとは違う、Twinsではない面を見せてくれるんです。ですから今回、この映画で彼女の別な面を出すことができたことを私は嬉しく思っています。
◆個人的には、鍾欣桐がものを食べているときと、泣いている様子がものすごく好きです。撮影中は非常に忙しかったんですが、すでにOKが出ているシーンでも、時計を見てまだ時間に余裕があるなと思ったら、鍾欣桐に、「もう一回泣いてみてくれる?」と言って泣かせてみたりしました。泣いているところがすごくかわいくて、私は好きなんです。超かわいい(日本語)。

観客3(日本語):今鍾欣桐さんのことだったので、次は陶紅さんのことで、“無間道(インファナル・アフェア)”から今回の映画祭でやっていた“大事件(ブレイキング・ニュース)”とか“愛・作戦(愛・作戦)”も、全部大陸の大物俳優が起用されています。ここのところ何年か、今まで香港映画に出演しなかったような大陸の俳優さんが起用されているんですけれども、今回陶紅さんを起用されたのはそういう流れのひとつなのか。それから、陶紅さんのどういうところを気に入られて起用されたのかをお聞きしたいです。

彭浩翔:私はこの映画を撮影する前に、陶紅さんの『ションヤンの酒家』という映画を観ました。大陸の映画として非常によくできているなと思い、とても気に入りました。この映画は、中国国内でも多くの賞を獲っています。今度の映画の企画が出たとき、まずプロデューサーと『ションヤンの酒家』に出ていたあの女優を使いたいという話をしました。それで陶紅さんに実際に会ってみて、やっぱりいい感じだなと思って起用を決めました。彼女は、私と演技について話し合ったりする時間を非常に多く割いてくれました。それに関してもとても感謝しています。私はストーリーを本当に少しずつしか教えないので、彼女は全体のストーリーを知らないまま、私のこのやり方に文句を言わずにつきあってくれました。

司会:では、最後に監督からみなさんにメッセージをお願いいたします。

彭浩翔:今回この映画を東京国際映画祭に出品することになって、今日ここで上映したわけですが、今後日本国内で公開されることが決まっています。ほかのみなさんにも楽しんでいただければ嬉しいと思います。どうもありがとうございました(日本語)。

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作成日:2004年11月9日(火)
更新日:2004年12月10日(金)