第17回東京国際映画祭

『ライス・ラプソディー』ティーチ・イン

開催日 2004年10月26日(火)
会場 VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ7
ゲスト 畢國智(Kenneth Bi)(監督)
張艾嘉、甄文達(Martin Yan)(出演者)
川崎真弘(音楽)
Rosa Li(プロデューサー)
司会 青柳秀侑
英語-日本語通訳 小林のり子


司会(日本語):それではまず、お客様からひと言ずつお願いしたいと思います。

畢國智(英語):今日はおいでいただいてありがとうございます。本当にとても名誉なことだと思います。こんなにたくさんのみなさんと一緒に見せていただいて、「あ、笑っている人がいる」とか「あ、泣いている人もいるのかな」とか思って観ていました。 《最初に通訳が間違えて英語に訳して場内騒然/呆然となるが、その後無事に日本語に。》

張艾嘉(英語):これほど大きなスクリーンでこの映画を観たのは初めてです。自分で自分の映画を観るのは奇妙な感じですが、「あそこにいるのが珍なんだ」ということで、再び彼女に返れたことをとても嬉しく思います。また、監督やみなさんと一緒に仕事できたことを嬉しく思っています。

甄文達(英語):実はこの映画を見せていただくのは2回目です。昨夜も観たんですが、感動して涙を流していたので、十分に映画を観ることができませんでした。長編劇場用映画に出るのは今回が初めてなので、今日こそは自分の演技を見ようと思っていたのですが、今回もやはり感動して泣いてしまい、よく見ることができませんでした。今回プロのみなさんからいろいろ学んだので、この次はもっとがんばりたいと思います。3回目に観る機会もあるので、そのときは泣かないで自分の演技を見たいと思います。

司会:絶対泣くと思います。

甄文達:ちゃんとハンカチを持っていますので大丈夫です。

川崎真弘(日本語):みなさん、こんばんは。私は日本人ですので、通訳間違えないように。この作品をやることになって、シンガポールへ行ったり香港へ行ったりタイへ行ったりしました。監督のKennyとの実際のやりとりはメールで、こちらからは音楽のMP3ファイルを香港に送って、香港からは編集のできたシーンをムーヴィーファイルで送ってもらって、「ここに音楽をこんなふうにつけたいんだ」、「こっちはこんな音楽でどうだ」というやりとりをしました。日本公開がまだ決まっていなかったものですから、完成品をいつ観れるのか心配だったんですけれど、こういった形で日本にみんなで来てくれて、たくさんの人に観ていただけたのがすごく嬉しいです。

司会:川崎さんは、みなさんと会うのは日本で初めてと昨日おっしゃっていましたけれど。

川崎真弘:今まではこちらから行って、いろんなロケも見たり、編集も立ち会ったり、最終の仕上げも立ち会っていたんですけれども、今度は逆にみんながこちらに来てくれるというのは、自分が日本を代表してみんなを迎えるような気持ちで、「よく来てくれました」とすごく嬉しいです。

Rosa Li(英語):今日はおいでいただいて本当にありがとうございます。こんなに大きなスクリーンで観たのは初めてで、本当に嬉しく、信じられない気持ちです。この映画は、香港とシンガポールの共同製作ですが、ここにいらっしゃる方以外にもいろんな国からの参加がありました。たとえばフランスの女優さんが出ているし、スタッフにはタイ人が多く、編集者はイギリス人で、弁護士はアメリカ人でした。本当にいろいろな国の人が努力してベストを尽くしていただいたので、このような作品になったと思います。

観客1(日本語):映画とてもよかったです。特にコンテストで、金水さんがどうしても珍さんに食べてもらいたいのをLeoくんに料理させて、しかもLeoくんと珍さんが仲直りまで行けちゃうという、もうすごく泣けました。それで質問なんですけれど、川崎さんという日本人の方を今回の音楽の担当にされていますが、今年の3月に公開された韓国の『殺人の追憶』という映画も、岩代太郎さんという日本人を音楽に起用していたんですよ。その監督は、日本のアニメーションの『るろうに剣心』のヴィデオを観て思いついたらしいんですけれど、監督はどうかと。

畢國智:1996年か97年に、香港で原田眞人監督の『バウンス ko GALS』を観て、その中で彼の音楽を聴かせていただきました。物語以上に音楽が非常に力強く、本当に気に入って4回観に行きました。音楽は本当に重要な部分だと考えていて、僕自身も作曲をやっています。もし今回自分が音楽をつけたら、絶対に川崎さんのをそのままコピーして使いそうなので、それはまずいと思いました。それで原田監督に頼んで、川崎さんを紹介していただきました。

司会:ということで、本当は本人がつけたかったのかもしれないですけどね。

観客2(日本語):シンガポールの映画では、一昨年この映画祭で観た『僕、バカじゃない』が大好きなんですけれども、あの映画で「Singlishを話すな、Englishを話せ」というのがさんざんネタとして使われていて、笑わせてもらったんですね。この映画もシンガポールの映画だということで、ひょっとしてまたSinglishが聞けるのかなぁと思って来たんですが、意外なことに、非常にわかりやすい、むしろ日本人の耳にはヘタなアメリカ映画よりもわかりやすいきれいな英語で、それでいて主人公のモノローグになると中国語になる。ちょっと不思議だなと思いまして、現実のシンガポール社会とこの映画の中で、中国語、English、Singlishというのは、それぞれどういう使い分けがなされているのでしょうか。

畢國智:シンガポールの人たちは、英語もSinglishも中国語もマレー語もタミル語もひとつの文章の中に入れてしまうような複雑な喋り方をしています。また中国語にもいろいろな方言があります。これらを混ぜて喋るのがシンガポールの文化であり、シンガポール人自身もそのような喋り方をおもしろがっています。しかし今回の映画ではキャラクターに焦点を当てたかったので、言語のほうはこのような感じになりました。

司会:聞くところによると、張艾嘉さんは英語の練習を一番最初にしたということですが。

張艾嘉:私にとってSinglishを話すのは簡単ではありませんでした。シンガポールの英語は、使い方を逆にしたりというように文法も変化していますし、最後に何でも‘lah’をつけたりします。スタッフの多くがシンガポール人なので、彼らが‘No, no, no lah’と言って直してくれました。撮影前に10日間練習しましたが、撮影中もずっと練習でした。英語だけではなく、中国語のアクセントも少し違っていて、私の話す北京語とは違いました。

観客3(日本語):すばらしい映画をありがとうございます。たくさんの個性的なキャラクターが出てきて、たくさんのエピソードが出てきて、盛りだくさんの映画だと思いました。とても楽しみました。個性的なキャラクターとエピソードというところがどこがシェイクスピアを思わせるような感じがしたんですけれども、監督は脚本もお書きということですが、本を書くうえで何を一番重要視していますか。

畢國智:何かを書きたいと思った一番最初のきっかけを大事にしています。ぱっと思いついてすぐに消えてしまうのではなく、しつこくずっと自分の中に残っていて、それが熟成していったときに書き始めます。そのスタートをとても大事にしています。ただ今回の場合は、このふたり(張艾嘉と甄文達)のイメージがきっかけとしてあって、役柄ではなくて本人のイメージで脚本を書きました。この人をこういうふうに喋らせてみようとか、この人をこういうふうに動かしてみようという感じで、とても楽しい作業でした。

司会:なるほどね。そうすると甄文達さんは非常にやりやすかった?

甄文達:今回の映画で料理人をやりましたので、俳優になれなかったら、日本の中華料理店に雇っていただいて海南鴨飯を作ります。たしかに実生活で役に立つ経験でした。

司会:プロデューサーのRosa Liさん、成龍ジャッキー・チェンさんの名前がエグゼクティブ・プロデューサーに書いてありましたよね。これだけの人たち、いろんな国の人たちを集めるのにやっぱり一苦労あったんじゃないでしょうか。

Rosa Li:はい、でもそれが私の仕事です。本当にみなさんからいろいろ学びました。その中には批判もあるし、お褒めの言葉もありますが、そのひとつひとつがとても役に立って、私も一生懸命苦労しました。

観客4(英語):私は、パートタイムで映画を作ったり役者をしたりしていて、Detroitから来ました。インディペンデント映画の世界を知っているので、お金を集めるのがたいへんだったと思いますが、何人くらい子供を売っぱらってお金を集めたのでしょうか。

畢國智:この映画は、これまでのよくある既成の映画とは違っていて、アプローチする人たちにどのようなできあがりになるかをイメージしてもらうのが大変でした。それで時間がかかったんですが、プロデューサーがしがみついたら離さないで、絶対に相手に‘No’と言わせないように、5、6年もしぶとくがんばってくれました。

甄文達:成龍を知っているということはとても大事なことです。そういう偉い人、これだと思った人にしつこく食らいつくこと、5年くらいくっついればいい加減向こうも金を出します。これが私の心からのアドヴァイスです。

張艾嘉:実は成龍が金水役をやりたいと言ったんですが、監督は、‘No, no, no. You cannot cook, Yan can cook1.’と言ってお断りしました。

甄文達:Yan can act!

Rosa Li:冗談はさておき、本当に成龍にはお世話になりました。彼は今、ハリウッドやほかのところで稼いできたお金を香港の映画界で使うということを本気で考えていて、私たちはその恩恵を受けています。しかしその前に、張艾嘉がいろいろな面でサポートしてくれて、彼女が成龍を紹介してくださらなかったら実現できなかったと思います。彼女にたいへん感謝しています。

司会:最後に張艾嘉さんに。実際に3人の息子さんを持っていらっしゃるということですが。

張艾嘉:私は今、6人の息子がいるような気がします。3人はシンガポールにいて、3人はもちろん私の手元にいる子供たちです。海南雞飯は、本当に有名な、伝統的なシンガポール料理ですが、海南鴨飯もとてもおいしいということを保証します。これは、常に決まりきったことをやるのではなく、心を開いて新しいものに挑戦するということだと思いますので、これからも心を開いていきたいと思います。

1]“Yan Can Cook”はMartin Yanがやっている料理番組の名前。→公式サイト

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作成日:2004年11月18日(木)
更新日:2004年11月30日(火)