第17回東京国際映画祭

『恋愛中のパオペイ』ティーチ・イン

開催日 2004年10月24日(日)
会場 VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ6
ゲスト 李少紅(監督)
司会・日本語-英語通訳 松下由美
北京語-日本語通訳 樋口裕子


司会(日本語):それでは監督にまずご挨拶と、みなさんに何かメッセージがあればいただきましょう。

李少紅(北京語):日本の観客のみなさま、今日はわざわざ私のこの映画を観に来てくださいまして本当にありがとうございます。感謝します。

観客1(日本語):中国映画とドラマのファンなんですけど、今日はようこそいらっしゃいました(この部分北京語)。“大明宮詞”、“橘子紅了”、それから“買辧之家”とか、周迅さんを使った作品が非常に多いようですが、監督にとって周迅さんはどういった点が魅力でこのように多くの作品を作られているのか教えてください。

李少紅:周迅は私たちが契約している女優なので、その関係でずっと私の作品に出てもらっています。彼女とは本当に長いつきあいで、もう5年くらい私の作品に出てもらっています。

司会:魅力という点について、女優さんとしてまたは個人として、お話し願えますか。

李少紅:周迅は、現代的な感覚あふれる女の子で、今の中国の若い役柄を演らせるととても似合う女優です。彼女のイメージは、古典を演じさせても現代的な役柄を演じさせてもどちらもとても似合い、両方ともとてもうまく演じることのできる、幅広い演技のできる女優です。周迅は勉強熱心で、基礎もしっかりしているし、確かな演技力を持っています。また、私と彼女とは、心もよく通い合い、お互いの考えていることをしょっちゅう話し合えるようなとても親密な間柄です。彼女は非常に優秀な女優だと思います。

観客2(日本語):中国映画ということで、どのようなものか楽しみにしていました。今まで観てきた、陳凱歌監督とか張藝謀監督みたいな重たい人間ドラマなのかと思っていたらそうではなくて、CGを使ったり、主人公の過去の部分の映像で黄色いフィルタを使ったり、かなり個性的だと映画を観てて思いました。これで台詞が日本語や韓国語だったら、そこの国の映画だなって思えるような映画で、正直ちょっとびっくりしたんですよね。私は今、日活芸術学院で高村倉太郎さんから、カメラのこととか、(今監督として作品を作っているので)監督としてどうしたらいいかとか教わっている中で、中国の事情もいろいろ聞いていたので、本当にすごくびっくりしたのと同時に、こういうふうに作れるようになったんだなぁ、10年前と映画事情が全然変わってきているんだなぁと思いました。監督ご自身は、今の中国映画界の実情をどのように感じているのか教えていただけませんか。

李少紅:私もかつては文芸作品と呼ばれる映画を撮っていました。張藝謀や陳凱歌とほとんど同じ世代で、第五世代に属しています。私の以前の作品には、『血祭りの朝(血色清晨)』、『紅粉べにおしろい(紅粉)』、『幸福の街(紅西服)』などがあります。こういう作品は、おそらく日本のみなさまの中にもご覧になった方がいらっしゃると思います。今回のこの作品は、私にとっては非常に意義の大きいもので、これまでとは全く異なった雰囲気の作品です。以前撮った作品はリアリズムの作品で、そのときの時代を反映したものです。
◆今中国はものすごく大きく変化しています。この10年、20年の変化は、これまで経験したことのないようなたいへん大きな変化で、私たち現代人の精神が、とてもその急速な変化の速度に追いついていけないような状態です。この20年来中国が経験している急速な変化を、物語にして表現してみたいと思って撮ったのが、この『恋愛中のパオペイ』です。構想から仕上げまでの様々な過程の処理においても、中国のこれまでの作品とは全く異なり、前衛的な作品に仕上がっていると思います。
◆意外にも、この作品は今年、中国政府の審査を通過しました。審査は通りましたが、とても馴染みにくい、受け入れがたい映画であると言われました。そういう作品でも審査を通ったわけですから、中国政府の審査基準が非常にゆるく開放的になったといえると思います。この作品は中国ですでに劇場公開され、とても人気が出たのですが、中国国内の映画祭には参加することができませんでした。
◆私は今年、この作品を持って十数ヶ国の映画祭に参加しました。この作品で、現在の中国が直面している現状を見ていただけたら嬉しいと思います。張藝謀や陳凱歌の作品とは大きく違ったこういう作品もあるということを、ぜひ世界中のみなさまにわかっていただきたいと思います。今までと違う新しいテイストの作品が、中国の映画史に必ずや残ると信じています。

観客3(日本語):とてもアヴァンギャルドな作りで、すごくポップでしたが、すごくメッセージ性が強く、急速に変化している中国の激動の中で生活している方々の心理的な変化がとてもよくわかりました。ヒロインが想像妊娠をしてしまうことに象徴されるものを、監督はどのようにお考えになって作られたのでしょうか。

李少紅:今のご質問はいろんな映画祭で多く受ける質問です。妊娠が象徴するのは、新しい命の誕生と希望です。中国人にとっても、妊娠というのは未来への希望と期待に満ちたものです。急速に変化する中国の現状の中で、誰もが大きな困惑、特に文明が受ける衝撃についての困惑を感じていますが、命というものに対する寶貝パオペイのゆるぎない希望がそこにあります。寶貝はそこに理想と希望を抱くわけです。


映画人は語る2004年10月24日ドゥ・マゴで逢いましょう2004
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作成日:2004年10月27日(水)
更新日:2004年11月30日(火)