第11回東京国際映画祭
ティーチイン
『ホールド・ユー・タイト』
参加者(敬称略)
ゲスト●關錦鵬(監督)、Tony Rayns(出演/評論家)
司会●市山尚三
通訳●小坂史子(北京語-日本語)、?(英語通訳1)(日本語-英語)
- ■司会(日本語):まず観客へ挨拶を。
- ◆關錦鵬(北京語):エンディング・クレジットの最後まで忍耐強く観ていただいて感激した。香港では途中で帰ってしまうので。
- ◆Tony Rayns(英語):この映画が日本で上映されて嬉しく思う。この映画にはいろいろな形で関わっているので、客観的にコメントするのは難しいが、批評家として言えば、關錦鵬監督のこれまでの作品とは少し変化があり、彼の最も正直な映画で、彼の最高傑作だと思う。日本での配給が決まれば嬉しい。
- ■観客1(日本語):Rosa(邱淑貞)と偉(陳錦鴻)の関係がよくわからなかった。また、偉がトン(曾志偉)に言った「あの夜は君だと思ってた」という台詞の意味がわからなかった。
- ◆關錦鵬:キャラクターの異なる女性でも、根底でどこか重なり合う部分があるのではないかというのが、女性(邱淑貞)を一人二役にした理由である。例えば、ムーンが死なないでいたら、Rosaのようなキャリアウーマンになったり離婚闘争をしたかもしれない。
- ◆香港では、小哲(柯宇綸)とムーンがどうやって知り合ったのかがわからないとよく言われた。確かにそれは描かれていないが、小哲とRosaが知り合うシーンで、小哲がRosaにウニが食べたいと言ったりするのを見れば、前も同じようにしたんだろうと想像がつくと思う。
- (二つ目の質問については司会者が手短に説明。)
- ■観客2(日本語):去年『私の香港』(山形で上映されたもの)という作品を見て大変感動した。あの作品と今回の作品とは、パラレルというかワンセットであると感じる。
- ◆關錦鵬:作った時期が重なっている、としか言えない。しかし二作品の関係について考えてみると、両者とも、自分が香港人として生きていくうえでの危機感のようなものが根底にあるという点で共通している。例えばこの作品では、新しい空港へ行くために通らなければならない青馬大橋(ラストシーンで出てくる橋)は、その象徴として登場させている。
- ■観客3(日本語):楊徳昌、岩井俊二と競作するという新作について聞きたい。
- ◆關錦鵬(何故かここだけ英語):楊徳昌、岩井俊二と3人で、同じタイトルの3本の映画を撮る。日本資本で、来年始めに撮る予定。
- ■観客4(日本語):今まで女性を主人公にした映画を撮っているが、今回は男性が中心である。演出上の感性的な違いはあるか。
- ◆關錦鵬(北京語):今までの映画でも男性の役者も使っているし、女性中心の映画を作ってきたつもりはないので、今回が男性中心とも感じていない。演出上の感性的な唯一の違いは、曾志偉に対してである。彼は実際にはゲイではないので、いろいろと心配した。
- ■観客5(日本語):この映画の音楽は、これまでの作品に比べて歌モノが多い。アメリカ型のサウンドトラックを意識したのか。
- ◆關錦鵬:今回の音楽は、バックグラウンド的な音楽が多い。テーマ的な曲は“As Tears Go By”で、ムーンがハミングしていたりするのだが、後は、都会に普通に存在している音として使っているものが多い。
- ■司会:Tony Raynsさんを俳優としてどう思うか。
- ◆關錦鵬:彼が出演しているシーンは、台北にある“Funky”という飲み屋で撮ったものである。そこは外国人がよく遊びに来る店で、中国語を話せる外国人が多い。中国語を話せる外国人の知り合いはTony Raynsさんしかいなかったので、彼に出演してもらうことに決めた。
- ◆Tony Rayns:撮影の前に監督と何度か“Funky”に行ったので、自分にとってはドキュメンタリー映画のような趣きがあった。
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1998年10月31日
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