ドゥ・マゴで逢いましょう'98


1998年10月31日(土)

10月31日土曜日。晴れ。映画祭日和である。

リプレイスメント・キラー

まず、映画祭とは関係なく、周潤發のハリウッド・デビュー作『リプレイスメント・キラー(The Replacement Killers)』(Antoine Fuqua監督)を有楽町スバル座に観に行く。初回の50分前くらいに会場に着くと、すでにかなり長い列ができていた。観客の中には映画祭で見かける顔もあり、『リプレイスメント・キラー』→『ホールド・ユー・タイト』というのが、香港映画ファンの今日の定番スケジュールらしい。

馬場医院、エンジョイ・スポーツ・ボーリング、養老の滝のCM3本立てを見ないとスバル座に来た気がしないのだが、今日は馬場医院しかやらなくて残念だった。

映画は、「呉宇森&周潤發」映画のいいとこ取りのようなもの。さすがにスローモーションの使用は控えめにしているが、呉宇森的アクションのてんこ盛りである。オリジナリティはないが、周潤發の魅力を世界の観客に印象づけるための商業映画としては、けっこうよくできているのではないだろうか。

台詞、演技、カメラワークのすべてを動員してこれでもかというほど描かれる感情表現とか、恥ずかしいコミカルな場面といった、アクション以外の呉宇森の特徴は排され、また、ヒロインのMira Sorvinoもかなり活躍させている。私は呉宇森ファンではないし、呉宇森映画のこういう部分が嫌いなのだが、これらを取ってしまえばもはや呉宇森的とはいえず、それに代わる何かがなければ物足りないのも事実である。

ホールド・ユー・タイト/愈快樂愈堕落/Hold You Tight

映画祭の1本目は、關錦鵬監督の新作『ホールド・ユー・タイト』。シネマプリズム部門のオープニング作品である。

今年の映画祭で最も楽しみにしている映画なのだが、前売り発売日が平日だったため買いそびれてしまった。スバル座から急行して、開演の2時間半くらい前から渋谷エルミタージュの当日券売場に並ぶ。当日券は40枚の予定で、私は6番目だった。2時間以上並ぶのはさすがに疲れたが、おかげで気分が映画祭モードに入ったようなのでよしとしよう。

後ろの方ではあるが、なんとか席は確保。観客の中には映画評論家の暉峻創三氏がいた。

■映画について

ムーンという女性(邱淑貞)の事故死をきっかけに、ムーンの夫、偉(陳錦鴻)、ムーンの恋人だった若い男、小哲(柯宇綸)、ムーンの夫に一目ぼれした中年のゲイ、トン(曾志偉)の3人の間に生まれる奇妙な関係を描いた話。

關錦鵬は香港で二番目に好きな監督で、常にはずさない監督でもある。最近の二作品(劇映画)は、アイデア勝負なところもあったが、本作品は久しぶりに正面から撮った映画だった。期待通りとてもよく、久しぶりに香港を舞台にしていることもあって、繰り返し観たい作品である。

ただし、出演者はちょっと物足りない。邱淑貞は好演していたものの、魅力的な女優がさらに輝く關錦鵬映画の水準からすれば、見劣りするのは否めない(個人的な好みによるところも大)。また曾志偉は、よかったのだが、彼は何をやっても曾志偉になってしまうので、わかりやすすぎて關錦鵬的な繊細さに欠ける気がする。

陳錦鴻がMacを使っていたり、曾志偉の部屋に表紙が張震の“楊徳昌電影筆記”があったのにはちょいとにやりとさせられたが、“悲情城市”のポスターは少しわかりやすすぎだろう。ところで、陳錦鴻の全裸シーンはボカシなしであった。

ティーチイン

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關錦鵬監督は、あんな繊細な映画を撮る人とは思われない、ヘンなおっさんショルダーバッグを携えて登場。いきなりのおバカかつ失礼な質問には、場内からも失笑がもれていたが、監督は質問を深く解釈しようとしたのか、それとも観客への配慮からか、実のある回答をしてくれた。広東語で話してほしかったが、北京語で通訳が小坂さんだったので、かなり安心して聞けたのはよかった。


↑ドゥ・マゴで逢いましょう'98→11月1日
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作成日:1998年11月2日(月)
更新日:2004年12月11日(土)