1997年11月6日(木)

ドゥ・マゴで逢いましょう '97


11月6日木曜日。有給休暇。晴れ。

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12階 ◇ 十二樓 ◇ Twelve Storeys

今日の映画鑑賞は夕方から。今日の1本目、通算13本目は、Eric Khoo監督の「12階」。これもシネマプリズム(アジア秀作映画週間)の1本。

開場が5時半だったのだが、間際になるまで行列ができなかった。夕食を買って並ぼうと思っていたのだが、予定を変更して喜楽でラーメンを食べてから会場へ。平日ということもあってか、客の入りはけっこう少なかった。Eric Khoo監督は、長編第1作の「ミーポック・マン」が福岡の映画祭とぴあフィルムフェスティバルで上映されている。一般公開されていないので監督の知名度も低く、観客の少なさも当然かもしれないが、「ミーポック・マン」はすごくよかったし、観た人の間では話題になった作品だったと思うし、やはりこれは寂しい。中国語圏映画に注目している人たちは、ぜひこちらにも注目してほしい。

映画について

シンガポール郊外(MRTが地上を走っている)のHDBフラットの12階に住む3組の家族の物語。同じフラットに住むひとりの青年の投身自殺によって始まったある日曜日を、HDBフラットのみを舞台に描いたユニークな映画で、大半が室内における会話である。HDBフラットという画一的、均質的な入れ物と、そこに住む人々や話される言語の多様性は、シンガポール社会の縮図といえる。

前作では、華語(北京語)話者と広東語話者や福建語話者とがふつうに会話している場面が興味深く、本作でも言語には注目していた。やはり、英語、華語、広東語、福建語など多様な言語が話され、また使う言語は相手によって変わる。特に、シンガポール華人で南方訛り(と私は呼んでいる)の華語を話す夫と、大陸から来た、北京風のそり舌音がクリアな華語を話す妻との会話が興味深かった。妻の台詞を夫が鸚鵡返しに繰り返すところで、両者の発音が大きく異なるところや、ふつうはずっと美しく聞こえる北京風の発音が、ヒステリックに話されると非常にきつく聞こえるところなど、面白かった。

映画において言語的なリアリティというのは非常に重要だと思うのだが、国内でこういう映画が作られている一方で、香港映画が華語吹き替えで上映されているのは納得できない。

ティーチイン:Eric Khoo

上映後のティーチインは、監督のEric Khooのみ。彼は、少し太めの、一見温厚そうな雰囲気の華人だが、けっこう眼光鋭くて、顔は笑っていても目は笑っていないという、ちょっと怖い人だった。緊張していたのか、適当なところで通訳を挟むという余裕がなくて、がんがん喋っていたのでちょっと困った。観客が少ないせいか、外国人からの質問が目立った。


侯孝賢 ◇ HHH:Portrait of Hou Hsiao-Hsien

今日の2本目、通算14本目は、Olivier Assayasのドキュメンタリー「侯孝賢」。これはシネマプリズムのシネマ・オン・シネマというパートの1本。シネマ・オン・シネマは、映画作家や映画をめぐるドキュメンタリーを上映するものである。

映画について

侯孝賢がOlivier Assayasと共に、子供の頃に住んでいたところや映画のロケ地などを訪れ、自分自身について、自作の映画について語るドキュメンタリー。昔の知り合いと再会するシーンなど、素顔の侯孝賢が見られると共に、話の内容も濃い。「童年往時-時の流れ-」の冒頭部分の引用で始まり、カラオケの熱唱で終わるという洒落た(ほんとか?)構成である。侯孝賢と関係の深い、朱天文、呉念眞、陳國富、高捷などへのインタビューも盛り込まれている。


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作成日:1997年11月13日(木)
更新日:2004年12月15日(水)