第10回東京国際映画祭

『十二階』ティーチイン


参加者(敬称略、以下同様)
邱金海(Eric Khoo)(監督)、司会(市山尚三)、日本語-英語通訳(いつもの人)
言語
英語

★三人兄弟のお兄さんは、シンガポールという国の管理主義的な面を象徴しているのか?
この映画を作るにあたって、シンガポールらしさを出そうと思った。華語を話す人や英語を話す人など、様々な言語が出てくるところもそうだし、この兄のキャラクターもそうである。

★中国から来た奥さんが、最後に昔のボーイフレンドの写真を見ているシーンがあったが、あれはシンガポールのぎすぎすした人間関係に嫌気がさして、中国を懐かしんでいるのか?
この奥さんは、物質的な豊かさを求めてシンガポールにやって来た。このシーンは、物質的な豊かさだけを追い求めて、精神的な豊かさを忘れていたことに気づくところである。

★登場人物がみんな暗くて、この映画を観るとシンガポールはあまりいいところではないのだろうかという印象を受けるのだが。
私はこの映画が暗いとはあまり思っていない。最終的にサンサンは自殺を思いとどまるし、アグーも奥さんが戻ってきてハッピーである。もっとも、そのような印象を抱かない人がいるというのもわかる。

★前作の「ミーポック・マン」でも、姉の日記を盗み見する弟や、黙々と麺を作っている青年とかが出てきたが、監督は、孤独な人々に興味を持って、それを描こうとしているのか?
「ミーポック・マン」では、純粋で、人から忘れられているような存在を描きたかった。

★クレジットにリーガル・アドヴァイザーというのがあったが、これは検閲対策のためか?
シンガポールには検閲はない。クレジットに載せているのは、あまり多くの謝礼をあげることができなかったからだ。
検閲はないが、当然PGはある。R指定とかになると公開する場所が限られてしまうので、そうならないようにしたかった。テーマが問題になるかとも思ったが、審査機関が好意的で、大丈夫だった。

★青年はどうして自殺したのかという背景が描かれていないが、どうして自殺したのか?
私はこの青年がどうして自殺したか知っているが、それは特に重要ではないと思って明示しなかった。この映画の登場人物のほとんどは、自殺をしてもおかしくない人々である。

★この映画は、シンガポールでは観客や批評家にどのように受け止められたのか?
2か月公開されて興行成績もよく、批評家からも好意的に受け止められた。
シンガポールでは、かつては多くの映画が作られていたが、それらはほとんどマレー映画だった。70年代以降だんだん少なくなり、ほとんど作られていないのが現状だ。今年は今のところ3本である。

★今後の予定について(司会者から)。
テレヴィの仕事があり、すぐにシンガポールに戻らなければならない。6話構成のものを作るのだが、私は1話だけを監督し、あとはプロデューサーとして、若い人を起用しようと思っている。

映画人は語る1997年11月6日ドゥ・マゴで逢いましょう'97
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作成日:1997年11月13日(木)
更新日:2004年12月14日(火)