1997年11月4日(火)
ドゥ・マゴで逢いましょう '97
11月4日火曜日。映画祭のため有給休暇。晴れ。
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按摩と女 ◇ The Masseurs and a Woman
今日の1本目、通算10本目は、清水宏の「按摩と女」である。ニッポン・シネマ・クラシックの1本。清水宏監督の映画は、ふだんほとんど上映されることはなく、たまにフィルムセンターで観られるくらいだ。だから、ここ数年、東京国際映画祭で彼の映画が上映されていることは非常に嬉しい。
会場に到着したときにはすでに開場時間の10時20分を過ぎていたが、客席はガラガラ。平日とはいえ、これは寂しい。
映画について
山の温泉町を舞台に、毎年商売にやってくる二人の按摩と、東京から来た謎の美女(高峰三枝子)や甥を連れた男(佐分利信)といった逗留客の日々の出来事が描かれている。客の財布が連続して盗まれるという事件が起こるものの、きわめてのんびりした温泉場の日常が、ほのぼのと描かれている。高峰三枝子と知り合ったとたん、一日また一日と滞在を延ばす佐分利信がよい。
男生女相 ◇ Yang and Yin: Gender in Chinese Cinema
今日の2本目、通算11本目はヴィデオで、關錦鵬監督の「男生女相」である。シネマプリズムのビデオ・プログラムという部門の1本。ビデオ・プログラムは、優秀なヴィデオ作品を上映する場として今年から新設された。
開演の20分前くらいに会場であるアップリンク・ファクトリーに到着。意外なことに、狭い階段に並んでいるのは95%が女性である。どうやらこれは、張國榮が出演すること、その場面がチラシに載っていたことと無関係ではないらしい。
映画について
この作品は、映画誕生100年を記念してBFI(英国映画協会)が企画した映画史のドキュメンタリーの中国篇である。私は見逃してしまったが、日本篇、フランス篇、アメリカ篇などは1995年ころに製作され、たしかテレビで放送されたと思う。監督は、日本が大島渚、フランスがゴダールだったはずだ。映画作家の個人的な視点からの、映画についての映画という趣旨の企画である。
内容は、中国語圏(香港、台湾、中国)の映画の歴史を、ジェンダーという視点から捉えたもの。父親の存在、同性愛、服装倒錯などの観点からの作品の引用と、監督や俳優へのインタビューで構成されている。解説によれば、かねてからゲイではないかと言われていた關錦鵬監督がカミングアウトした作品でもあるらしい。中国における家族およびジェンダーに対する見方の変化が捉えられていて、興味深い作品になっていた。
インタビューされているのは、呉宇森、侯孝賢、楊徳昌、蔡明亮、陳凱歌、方育平、徐克、張國榮など。引用されている作品は、「狼/男たちの挽歌・最終章」「童年往事-時の流れ」「牯嶺街少年殺人事件」「青春神話」「さらば、わが愛・覇王別姫」「父子情」「バタフライ・ラヴァーズ」「天使の涙」など。
宋家の三姉妹 ◇ 宋家三姉妹 ◇ The Soong Sisters
今日の3本目、通算12本目は、張婉婷監督の「宋家の三姉妹」である。協賛企画のカネボウ国際女性週間の1本。女性映画といった括り方は好きではないこともあり、この企画の映画を観るのは初めて。場所はシネセゾン渋谷である。
開演1時間前くらいに会場に行くと、まだ列は短く、女性映画週間の常連みたいなおばさんがほとんどでびびった。しかし、最終的には立ち見がかなり出るほどの満員になった。やはり、香港映画ファンが大勢つめかけているらしい。上映前に、この映画の衣装を担当したワダエミさんの舞台挨拶がある。
映画について
富豪の妻、宋靄齢(楊紫瓊)、孫文夫人、宋慶齢(張曼玉)、蒋介石夫人、宋美齢(鄔君梅)の三姉妹の半生を、結婚と姉妹の関係を軸に描いた大河ドラマ。大河ドラマに傑作なし、というのが私の持論であり、この映画もそうである。監督の張婉婷の映画は1本しか観てないのだが、その「誰かがあなたを愛してる」(傑作である)を観る限り、彼女は大作を撮るタイプではないと思う。同じ題材を描くにしても、大河ドラマにはならない撮り方ができたはずである。
三姉妹の中ではやはり張曼玉がいいが、彼女としては並という気がした。蒋介石役の人は、知らない俳優だが、頬骨に野心が現れていてなかなかよかった。それにひきかえ、趙文瑄の孫文はぜんぜん魅力がない。
吹き替えであったこと(全員かどうかはわからないが、少なくとも張曼玉はそうだった)、老けメイクがうまくいってないことも問題である。
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