ドゥ・マゴで逢いましょう2003

2003年11月2日(日)


11月2日、日曜日。晴れ。

世界でいちばん私をかわいがってくれたあの人が去った ◇ 世界上最疼我的那個人去了 ◇ Gone Is the One Who Held Me Dearest in the World

今日の1本目、映画祭通算4本目は、アジアの風の『世界でいちばん私をかわいがってくれたあの人が去った』。中国新勢力特集の1本で、馬曉穎監督の第一作である。

手術をすることになった老いた母親とその介護をする娘の話。感情移入を誘うような登場人物との距離の近さと、それをさらに煽るべく流れまくる感傷的な音楽と、ドラマティックなエピソードを盛り込む描き方に、ちょっと引いてしまった。

傍から見ると、仕事と超非協力的な夫を抱えて、この娘(久しぶりの斯琴高娃)は非常によくやっている。もちろん当人にしてみれば、どんなに一生懸命やっても、もっとこうすればよかったという悔いは残るだろう。しかし、再三モノローグで後悔の念が語られたり、山の上で号泣したりするのはいかがなものだろうか。介護の辛さと親孝行したい気持ち、介護から開放された安心感と失った悲しみ。誰にもその両方があって、その間で揺れ続けるものだと思う。そのあたりをもっとさりげなく、映像で描いてほしかった。

おばあちゃんを演じたのはヴェテランの女優さんだということだが、話が進むにつれてどんどん可愛らしくなっていき、なかなかよかった。ドラマティックなエピソードより、このおばあちゃんの存在感のほうが感動的である。舞台は北京で、『青い凧』にも出てくる銀錠橋が出てきたのが嬉しかった。

◇◇◇

カフェで昼食を食べて、新宿へ移動。

片腕カンフー対空とぶギロチン ◇ 獨臂拳王大戰血滴子 ◇ One-armed Boxer vs the Flying Guillotine

次は、今回唯一の東京国際ファンタスティック映画祭。渋谷パンテオンなきあと、会場は新宿ミラノ座に移った。プログラムは、映画秘宝スペシャル「ギロチン祭り」という王羽監督・主演作品の2本立て。王羽は一度観たいと思っていたので何も考えずに予定に入れたが、『片腕カンフー対空とぶギロチン』が『キル・ビル』の元ネタだということから、この企画が出てきたようだ。開場時間を過ぎて到着したが、長い行列は遅々として進まず、ますます長くなるばかりである。予想どおり、格闘技系の立派な体格の人が多く、女性はかなり少ない。

ファンタの派手な演出や異様なノリは以前から嫌いである。映画秘宝スペシャルのノリはさらにすごくて、全然ついていけない。映画秘宝は1回しか買ったことがなく、『キル・ビル』はまだ観ていないのでネタもわからず(地上波を見ないので予告編も見ていない)、引きまくりつつ上映が始まるのを待つ。

やっと始まった今日の2本目、映画祭通算5本目は、前述の『片腕カンフー対空とぶギロチン』。片腕の王羽が、清朝の刺客・ギロチン坊主と対決する話。王羽の片腕カンフーも健闘しているが、ギロチン坊主のほうが圧倒的に存在感がある。いきなり訓練(?)しているところを見せるプロモーション・シーンで登場して、強力に存在をアピールする。それになんといっても武器のギロチンがすごい。映画の中でも「噂には聞いているけれど誰も見たことがない伝説の武器」という感じの存在で、見た人は呆然として「実在したのかー」と言う。ギロチンを見た感動を、映画の中と、外で観ている私たちとで共有するという、得がたい経験ができる。王羽がギロチン坊主をやっつけることよりも、ギロチン坊主が出てきてギロチンを見せてくれるのをひたすら期待する、そういう映画である。

上映終了後、本物の王羽が登場してティーチ・イン。けっこう太っている。司会者が細かい具体的なことを聞きたがるのに対して、王羽は抽象的な答えをしがちであり、いまひとつ質問と答えが噛み合っていない印象を受けた。

ティーチ・イン詳細

女性が少ないとはいえ、トイレに並ぶだけで終わってしまった休憩のあとは、またしても映画秘宝な人たちが登場し、テンションの高いイヴェントが延々と続く。来年DVD発売予定のショウ・ブラザーズ作品の予告編や、『キル・ゼロ』という妙な短編の上映。面白くないわけではないが、早く映画を見せろと言いたい。

怒れるドラゴン/不死身の四天王 ◇ 四大天王 ◇ Four Real Friends

やっとやっとやっと始まった今日の3本目、映画祭通算6本目は、『怒れるドラゴン/不死身の四天王』。王羽を含む当時の四天王が、町の悪徳実力者に挑むお話。

当時は、四天王が勢ぞろいしているだけで観客は大喜びだったのかもしれないが、四天王すべての見せ場を作る難しさもあって、あまりぱっとしない出来である。そもそも王羽以外知らないし、誰も「四天王」というオーラを発していないので、どれが四天王なのかわかるまでに時間がかかる。御三家映画を知らずに観たら、やはりこういう感じなのだろう。王羽は、今は恐いけれどこの頃はなんだか気の軽そうな人で、濃い目な人たちの中でひとりだけ浮いている。

この映画の一番の注目は、四天王の誰でもなく、悪役の日本人である。戦いの前に“武”と書いた扇を開いて引き裂き、戦いに勝つと瓜二つの新しい扇を懐から取り出す。四天王の活躍よりも、このお約束シーンが楽しみな映画だった。

ファンタの2本立て企画の2本目はいつも添え物である。今回も同じで、「ギロチン祭り」と言いながらギロチンとも関係がない。ギロチンでなくてもいいのなら、『ブレード 』のオリジナルである『片腕ドラゴン』にしてほしかった。

◇◇◇

久しぶりに歌舞伎町の鬚鬍張魯肉飯に行こうと楽しみにしていたのに、あとかたもなく消えていた。予想よりもずっと遅くなってしまったので、ハイチでカレーを食べてさっさと帰る。


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作成日:2003年12月10日(水)
更新日:2004年11月29日(月)