ドゥ・マゴで逢いましょう2003

2003年11月3日(月)


11月3日、月曜日。文化の日。くもりのち雨。

愛の大地 ◇ 愛的天地 ◇ Love Begins Here

今日の1本目、映画祭通算7本目は、アジアの風部門の『愛の大地』。「「魅せられて」前夜 - ジュディ・オングの台湾映画時代」特集の1本である。会場は狭いほうの渋谷ジョイシネマ。別に翁倩玉ジュディ・オングのファンではないが、空席が目立ってちょっと寂しい。

癌で余命1年と知った翁倩玉が、残りの人生を孤児の教育のために捧げるという話。歌って踊れる翁倩玉が主演なので、ミュージカルと学園ドラマと難病ものが合体した妙なつくりである。思っていることが歌詞で赤裸々に語られるところはかなり恥ずかしい。J先生は山茶花究だって言うんですけどね(どうもすいませんっ)、私はかなり悪くした安藤昇だと思うスパルタ校長先生は、改心したとたん歌い出したりして、これも恥ずかしい。

難病ものと言っても、死ぬ直前まで病気の兆候はまるでない。この頃の翁倩玉はちょっと太めで頬も丸く、はっきり言って健康そのものだ。大半はミュージカル仕立ての学園ドラマであり、最初は敬遠されていた翁倩玉が、だんだん皆に受け入れられて、暗かった学園も明るくなるというお話である。最後にとってつけたように翁倩玉が死んで悲劇となるが、お葬式の挨拶で「立派な国民を作るためにがんばった」といったことが語られると、感動の涙(流してないけど)もぴたっと止まる。いろいろ盛りだくさんのわりに、ロマンスがないのが寂しい。

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昼食は、西武の地下のヴェトナム料理屋でフォーを食べる。最近、こういったこぎれいなヴェトナム料理屋がいくつもできているが、味のほうもこぎれいで、また行こうと思わせるところは滅多にない。

ジュディのラッキー・ジャケット ◇ 無價之寶 ◇ Judy's Lucky Jacket

今日の2本目、映画祭通算8本目は、やはりアジアの風部門の『ジュディのラッキー・ジャケット』。同じく「ジュディ・オングの台湾映画時代」特集の1本である。

亡くなったおじいさんが大切な宝物を入れたというジャケットを探して繰り広げられるコメディ。やはりミュージカル仕立てである。内容はたわいもないドタバタだが、タイトルバックも、映画中で歌われる歌も、『愛の大地』より痩せている翁倩玉のファッションもおしゃれだ。今回はロマンスもあるが、相手役は竹内力みたいである。

翁倩玉が旅行ガイドの学校を卒業するところから物語が始まるので、彼女がガイドになって台灣中を飛び回り、有名観光地を次々に紹介するのかと期待したが、残念ながらそうではなかった。しかし、70年代の台北の街並みが見られるのが嬉しい。中華路には台鐡が走り、圓山大飯店は増築中だった。

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ドゥ・マゴへ行ってホット・チョコレートをすする。映画人は見かけなかったが、今回もドゥ・マゴに行くことができて、とりあえずほっとする。

7-ELEVENの恋 ◇ 7-eleven之戀 ◇ Love at 7-11

今日の3本目、映画祭通算9本目は、やはりアジアの風部門の台湾映画『7-ELEVENの恋』。会場はシアターコクーンに変わり、上映前に、怪しい雰囲気の鄧勇星監督と、出演者の呉克群と和志武礼子さん(プロの俳優ではないらしいので、呼び捨てにはしにくい)などの舞台挨拶がある。

毎朝、7-ELEVENにローファット牛乳とおにぎりを買いに行く蔡氏(黄品源)と7-ELEVENの女性店員との淡いふれあいを描いた話と、蔡氏が主題歌を作ったテレヴィ・ドラマ“雨衣”と、蔡氏が編集している、祇園の芸妓・菊柳さんのドキュメンタリーの3つが並行して語られる。この3つは蔡氏を介してつながっているのだが、それだけではなく、7-ELEVENに“雨衣”のポスターが貼られたり、“雨衣”に出てくる日本人留学生が実は芸妓さんだったり、互いに微妙につながっている。それもあって、内容も形態も異なる3つの話が、あまり違和感なく共存している。

表向きは黄品源が主人公だが、それぞれの話に出てくる3人の女性を描いた映画であるともいえる。3人は個性も生き方も異なるけれども、自分の生き方を模索していて、そのために恋愛を犠牲にしてしまうようなところが共通している。スタイルの異なる3つの話と生き方の異なる3人の女性。その対比とつながり具合がなかなか絶妙である。

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夕食は、昨日食べ損ねた鬚鬍張魯肉飯へ行く。今日はドゥ・マゴへも鬚鬍張へも行って、すでに目標達成である。

冬至 ◇ 冬至 ◇ The Coldest Day

今日の4本目、映画祭通算10本目は、やはりアジアの風部門の『冬至』。中国新勢力特集の1本で、謝東監督の第一作。

ヒビの入った夫婦とそこに関わる若い人妻の話。モノトーンっぽい映像の美しさに圧倒される。夜とか室内とか暗いシーンが多いが、ただ暗いだけではなく色合いが絶妙だ。郊外のシーンは、白い雪と黒い幹のコントラストが美しい。寒がりの私は、冬の北京なんて死んでも行きたくないが、この映画を観ているとちょいと行ってみたくなる。内容は異なるが、もう若いとはいえないカップルと、モノトーンの冬の北京ということで、王小帥の『ザ・デイズ(冬春的日子)』を思い出した。

男女3人というと、男2女1というパターンが多いが、これは男1女2である。しかも、決断して突き進むのは女たちのほうで、男はただ優柔不断にうろうろ振り回されているだけ、というところがいい。“冬至”というタイトルは、今が最悪の時で、これからだんだん暖かくなってやがて春がくるというたとえだと思うが、彼らがはたしてやり直せるのかどうか、曖昧なまま終わるところもいい。「しかしまたじき冬になるよ」と、『門』の宗助も言っている。

ティーチ・インはぜひ聞きたかったが、明日も早いので帰った。


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作成日:2004年1月14日(水)
更新日:2004年11月29日(月)