第14回東京国際映画祭

春の日は過ぎゆく ティーチイン

- 参加者(敬称略) -
ゲスト●許秦豪(監督)
司会・日本語-英語通訳●山根ミッシェル
韓国語-日本語通訳●?


■観客1(日本語):前作『八月のクリスマス』と今作の原点となるような、監督が影響を受けた映画は何か?
◆許秦豪(韓国語):監督になる前の5年間、朴光洙監督の助監督をしていた。『あの島へ行きたい』と『美しき青年 全泰壱』。だから朴光洙の影響は受けている。また、自分が一番好きな映画は、小津安二郎の『東京物語』である。

■観客2(日本語):サンウの家は『八月のクリスマス』の主人公の家と同じように思えたが、同じ家か?
◆許秦豪:別の家である。

■観客2:映画で使われている曲(ウンスがハミングする曲)として、あの曲を選んだ理由は?
◆許秦豪:サンウとウンスの共通の思い出となる曲がほしいと思って音楽監督に相談したところ、この曲はどうかと言われたので決めた。

■観客3(日本語):『八月のクリスマス』と今作の主人公の男性は、どちらも韓国男性によくあるタイプだと思う。監督にも似ている気がするが、どうか?
◆許秦豪:主人公の視点で映画が進行するので、たしかに自分の視点は反映されている。しかし、ある部分は似ているけれどもある部分は異なる。

■観客4(日本語):前作と今作とで、テーマの連続性を意識したか?
◆許秦豪:まだ2作品しか撮っていないので共通点を挙げるのは難しいが、自分で作品を観てみると、どちらにも自分の世界の見方が現れていると感じる。自分は記憶や時間の流れに関心があり、そういう視点で世界を見ている。

■観客4:前作の評判がよかったことは、今作を作るにあたってプレッシャーになったか?
◆許秦豪:前作に対するプレッシャーというよりは、映画作りそのもので苦労した。

■観客5(日本語):ラストについて聞きたい。中盤では幸せの絶頂だったのに、最後はすれ違ってうまくいかないラストにしたのはなぜか? 前作もそうだったが。
◆許秦豪:ハッピーエンドを迎えたときよりも、かなわぬ思いを抱いて別れたときのほうが強く記憶に残ると思う。なぜそう思うのかはよくわからないけれども。しかし、次回作では、男女が出会って結婚して終わりというものにしようかとも考えている。

■観客6(日本語):雨、雪、風などの自然の映像と音が印象的だった。そういうものに対して思い入れがあるのか?
◆許秦豪:難しい質問である。この作品を発想したひとつのきっかけが自然の音と風景だった。自然の音や風景から、人間がどのような感情やなぐさめを得ているかということに関心をもった。自然が人の感情をどう左右するのかを突き詰めてみたいと思って作ったのがこの作品である。

■観客7(日本語):前作も今作も、四季の変化が描かれている。今作は冬から始まって桜の季節で終わる(筆者注:本当は「麦秋」で終わる)が、撮影期間はどのくらいだったのか? また、前作では雪が足りなくて塩を使ったというのを読んだが、今回は雪は足りたのか?
◆許秦豪:撮影期間は、前作は9月から12月、今作は2月から6月の始めまでだった。人の心も季節と同じように変化すると考えており、季節の変化を映しとるのが好きだ。
◆雪のシーンは、降るのを待って撮るのは難しい。冒頭のサンウの家の屋根などに雪が積もっているシーンは、やはり塩を使っている。

■観客7:前作ではカメラの動きがほとんどなかったが、今作は撮影監督が変わって、少し動きがあった。カメラの動きに対するこだわりは?
◆許秦豪:前作はカット数も動きも少なかった。今作では、意図的に少し動きを入れたいと思っていた。しかしどちらかといえば、俳優の自然な動きを追うことにより、自然に動きが出たといえる。カット数は前作と同じくらい少ない。

■観客8(日本語):ヒロインが性格的に冷たすぎると思った。どのような女性像を描こうとしたのか?
◆許秦豪:冷たい女性と感じたかもしれないが、男性の場合でも、心変わりをした男性は女性から見たら冷たく感じるだろう(筆者注:質問者は男性)。性格的に冷たいというよりも、心変わりをしたときの冷たさが現れていたと思う。

■観客9(日本語):劉智泰と李英愛をキャスティングした理由は?
◆許秦豪:劉智泰は、会ったときに心が澄んだ少年のような印象を受けて、役のイメージに合っているので起用した。李英愛は、これまでの作品での演技やスクリーン映りを見ていいイメージをもっていたので、出てほしいと思って会った。そのときに彼女はシナリオを読んできて、ウンスをどのように解釈しているかを話してくれたが、それが自分の意図に合っていたので起用した。

■観客9:ふたりはかなりいい演技をしていて、ウンスも冷たいというよりも、揺れる心がよく出ていたと思う。監督はふたりの演技に何か注文を出したか?
◆許秦豪:演技には特に注文は出していない。俳優から自然に出てくるものがいいと考えているので、3人で話し合って役を作り上げていった。その成果があって自然な演技をしてくれたと思う。李英愛は、観客が自分のキャラクターを理解してくれないのではないかと心配していたので、今言ってくれた感想を彼女に伝えたい。

映画人は語る2001年11月2日ドゥ・マゴで逢いましょう2001
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作成日:2001年11月7日(水)
更新日:2004年11月29日(月)