1996年6月9日(星期日)

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牛車水大廈のホーカーズ・センター★★★

牛車水大廈(Chinatown Complex)2階のホーカーズ・センターに夕食を食べに行く。ホーカーズ・センター(Hawker's Centre)というのは、HDBフラットやショッピング・センター内にある、数十軒の屋台が集まった大規模な屋台街である。

ここ牛車水大廈のホーカーズ・センターは、かなり広いフロアに、たくさんの屋台とテーブルと椅子と人がひしめく、活気に満ちた場所だ。四方は開放されているが、風が吹き抜けないほど広く、熱気でむっとしている。料理はやはり中華が多い。

ガイドブック等には「ホーカーズ・センターでは好きな屋台で注文できる」と書いてあるが、それは私の体験した限りにおいては嘘である。飲み物を扱う屋台には縄張りのテーブルが決まっているようで、好きなところで食べ物を注文したければ、飲み物しか売っていない店の縄張りに座ることだ。私たちが座ったところは、不幸にも食べ物も作っている屋台の縄張りだった。Tiger Beer(タイガー・ビール)を注文したが、店のおばちゃんはそれだけでは引き下がってくれない。「麺? それともご飯?」などと広東語でまくしたて、おにいさんを呼んで来て「この子たちったら麺もご飯もいらないって言うのよ、ぶつぶつぶつ」と愚痴る。

とりあえず青菜炒めを注文したら一応引っ込んでくれたが、まだ不満そうだ。私たちも覚悟を決め、ここで注文することにした。屋台の前まで行って壁のメニューを見ていたら(メニューなんてものはシンガポールに来て初めて見た)、おばちゃんが寄ってきていろいろと勧めるが、不幸にもここは私の嫌いな海鮮中心の店だった。なんとか海鮮が入ってなさそうなものを探し、‘紅豆腐’を注文すると、おばちゃんもやっと満足したようで、“好!(hou)”と笑った。紅豆腐は揚豆腐と野菜を炒めてあんを絡めたようなものだった。青菜は空心菜を頼んだのに違うものが来たけれど、おいしかったからまぁ許してあげよう。全部でS$13(約¥510/人)。

Tiger Beer(タイガー・ビール)★★★★★

シンガポールのローカル・ビール、Tiger Beerはとてもおいしかった。今後、おいしいビールリストの先頭に載せることにしようと思う。Tiger Beerは、1931年にハイネケンの技術指導で生まれたということだ。

デザートにフルーツを買う。台湾にあるのと同じような、切ったフルーツを売っている屋台で、好きなのをビニール袋に入れてもらう。スター・フルーツなど3種類くらい買ってS$1.20(約¥95)。外に出て、もうすっかり暗いのにまだ座っているおじさんたちに混じって食べた。

ドリアン初体験★★★★

[ドリアン]
◇durianを食べた店(撮影は別の日)◇

駅に向かってぶらぶら歩いていると、突然ドリアン(durian)を売っている店に出会う。今日一日、何度か気配(匂い)を感じながらも一度も会えなかったのに。‘3粒S$10、1粒S$5’と書かれていて、店先の椅子で食べることもできる。ドリアンは種のまわりを食べるものだと聞いているし、「粒」というのは日本語ではあまり大きいものには使わないので、てっきり種3粒だと思ってS$10(約¥800)札を差し出す。店のおじさんが、「ここで食べる?」と聞きながら3個のドリアンを指さしたとき、ヤバい気配を感じたがもう遅く、すでにおじさんは3個のドリアンを割っていた。

夕食直後の満腹にテーブルいっぱいのドリアン。しばし呆然とするが、夢にまで見たドリアン、気合いを入れていただく。一口食べると、確かに強烈だが悪くない。ものすごく臭いと言われているけれど、純粋に鼻で嗅ぐ匂い(ドリアン売り場の近くに漂っている匂い)は私にはどちらかと言えばいい匂いに感じる。味と共に感じる匂いはかなり強烈だが、臭いのとは違う。味はねっとりしていてコクがあるので、ジューシーとか爽やかといった、フルーツの一般的なイメージとは程遠い。むしろチーズの方が近く、癖のあるチーズが好まれるのと似ていると思う。結論としてはなかなかおいしい。3個もあると、「当たりはずれ」の一端を味わうことができる。初心者には食べやすいあっさりしたものから、「当たり」に違いない濃厚なものまであり、その差を実感できた。

なんとか、大量のドリアンをほとんど平らげたとき、「飲んだ後にドリアンを食べてはいけない」と書いてあったのを突然思い出す。そんなに飲んではいないのだが、気になるのでさっさとMRTに乗って帰途についたが、何事もなく無事にYMCAに着いた。

Singaporeの印象

「シンガポールは綺麗すぎて非人間的でおもしろくない」という話をよく聞く。確かに、香港や台湾と比べても、ディープさが足りなくておもしろみに欠けるというのは否定できない。でも、「シンガポールもそんなに悪いところじゃないんじゃない」というのが、まる一日を過ごした私の印象である。シンガポールにだって庶民的な街もあるし、庶民の生活もある。よく「ゴミひとつ落ちてない」と書いてあるけど、そんなこともない。人は自分が見たいものしか見ないもので、だから「シンガポールは綺麗すぎて嫌いだ」と思っていると、綺麗で新しいものばかりが目につくのだろう。

政府がアピールしたいシンガポールのイメージが、私や、否定的な感想をもつ人たちの好みに合ってないのは確かだし、古いものがどんどん取り壊されつつあり、さらに悪い方向に向かっていることも間違いない。だけどここは華人の街である。華人の街が、そんなに簡単にただキレイなだけの街になっちゃうわけは絶対ない、そう私は断言する。

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更新日: 1999年2月13日(土)