1996年6月18日(星期二)

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粥と青菜炒め★★★

天気はくもり。

朝食を食べて早場(モーニング・ショウ)で映画でも観ようと思い、MRTでChinatownへ行く(Dhoby Ghaut→Outram Park)。

長城というコーヒーショップに入り、粥の屋台で鶏と豚の粥、青菜炒めを頼む(S$8.50、約¥340/人)。店のおばちゃんは飲み物を聞きに来なかったので、何も頼まなかった。ほかの客も観察したところ、粥を食べれば飲み物はとらなくてもいいみたいだ。たぶん粥屋台はこのコーヒーショップがやっているのだろう。青菜炒めがなかなかおいしく、「私は青菜炒めさえあれば生きていける」と思う。

[HDBフラット]
◇HDBフラット◇

新聞を買って、牛車水大廈横のコーヒーショップに行く。長城は通勤途中の人などふつうの人が来ていたけれど、ここは暇そうなじいさんばかりで、みんなぼーっとしている。店のおじさんが英語で注文を聞きに来て、華語で“兩杯[口加][口非](コーヒー2杯)”と言ったら、ヘンな顔をしていたがわかってくれたみたいだ。濃いブラック粉コーヒーが飲みたかったのだが、ここのはげきあまkopi(コンデンスミルク、砂糖入りのコーヒー)だった(S$0.70/杯=約¥55)。

牛車水大廈の上はHDBフラットだ。多くの窓から物干し竿が水平に突き出ていて、色とりどりの洗濯物が干されている。洗濯物のひとつひとつがよく見えないせいもあるが、このように干されていると、なかなかカラフルでポップでキュートだ。

今日の新聞: 聯合早報

今日の新聞は久しぶりの聯合早報。しばらくシンガポールを離れている間に、映画のプログラムも少し変わっている。李麗珍主演の“豪放天使之雄覇一方”は、前は早場でやっていたのが普通のロードショウに変わっていたので、またあとで観に来ることにする。芸能関係は目立った記事なし。

「市庁前広場」

MRTでCity Hallに移動する。City Hall界隈は、ラッフルズが上陸した地点に近く、英国の面影を色濃く残す場所である。

[Padang]
◇Padang◇

City Hall(市庁舎)、Padang(パダン)などを見る。Padangとは、City Hall前の芝生の広場である。『幻のシンガポール』[SG2]にも書かれているように、1943年7月、ここでスバース・チャンドラ・ボースインド国民軍閲兵式が、当時の日本の首相、東条英機を迎えて行われた。

小津が使ったネタージ(統御者)という言葉が強く斎藤の耳に残っていた。それをはじめて聞いたのは、七月五日、市庁前広場で行われたボースのインド国民軍閲兵式だった。 (p356-357)

小津安二郎は、キャセイ・ホテルの自分の部屋から、彼の嫌いな俯瞰でこの閲兵式を撮ったということである。

City Hall界隈の金子光晴

[Raffles Hotel]
◇Raffles Hotel◇
金子光晴は、『どくろ杯』[SG24]に、初めてシンガポールに上陸したときのことを次のように書いている。

無事に税関を通って、この土地の炎天でも走っている人力車(チャア)に乗って、カンナの花のあいだに燃える椰子檳榔のつづくエスプラネードをすぎ、纏橈植物で毛むくじゃらになったレーン・トゥリーの枝をのばした緑芝の土地に、教会や、世界で一番アイスクリームのうまいというホテルを望見した。そこにこの獅子島(シンガピラ)の植民地都市を創立したラッフルスの銅像もあった。 (p238)

「教会」はSt. Andrew's Cathedral(セント・アンドリュース教会)、「世界で一番アイスクリームのうまいというホテル」はRaffles Hotel(ラッフルズ・ホテル)だろうか。Thomas Stanford Rafflesの黒い像は、現在はVictoria Theatre & Concert Hall(ビクトリア・メモリアル・ホール)の前にあるが、19世紀末にはPadangの中央にあったようだ [SG31-1]

Merlionは「世界三大がっかり」か?

[Merlion]
◇Merlion◇

小津安二郎も金子光晴も見ていないMerlion(マーライオン)をElizabeth Walkから見る。Merlionは、1972年にできたシンガポールのシンボルで、上半身がライオン、下半身が魚の白い像である。

Merlionは「世界三大がっかり」のひとつであると言われているようだが、私は別にがっかりしなかった。今は橋の工事をしていてまわりの景観は悪いし、水も吹き出していなかったけれども、なかなかキュートだし、8メートルという大きさも慎み深くてよい。こういう超有名なモニュメントは、たいていたいしたことないものなので、特別に期待する方が間違っているのだ。でも、こんな歴史もなにもない像で観光客を呼ぼうというのは、ちょいとあさはかだと思う。ちなみに、私の「世界一がっかり」は江ノ島である。

Merlionを見ていたら、サングラス姿の運転手が福建語歌謡を大音量でかけている陽気な観光トライショーが近づいて来た。彼は、「シンガポール、暑いね、雨ないね…」と日本語で叫びながら去って行った。

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更新日: 1999年2月14日(日)