1996年6月11日(星期二)

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両替の謎

11時ごろ起きる。目が醒めたとき、一瞬ここはどこだろうと思ったが、Melakaであると気づいてほっとした。ホテルを出ると外は曇っていたが、歩いているうちに快晴になる。

まずは両替をしなければご飯も食べられない。銀行より両替屋の方がレートがいいと聞いていたが、先に銀行を見つけたので入ってみる。両替を頼むと、¥10000=RM225のメモを出して、「ウチのレートはこれだけど、両替屋の方が(レートが)いいからそっちに行きなさい」と言って、両替屋の名前と番地と道順まで教えてくれた。そのSPAKという両替屋に行くと、RM1=¥44.15(¥10000=RM226.5)であり、たしかに銀行よりもよい。でも、わざわざ両替屋を教えてくれる銀行というのも不思議だ。

鶏飯(Hainan Chicken Rice)★★★★

[和記鶏飯]
◇和記鶏飯◇

もう昼過ぎなので、朝食は昼食だ。マラッカ川にかかる橋を渡って右岸のチャイナタウンに行き、和記鶏飯(Hoe Kee Chicken Rice)という店に入る。鶏飯とアイス・ティを注文(RM16.6、約¥370/人)。

Melakaは、他の大きな都市と同じく、華人が中心の街である。華人の人口構成は、福建人44%、客家人18%、潮州人11%、広東人11%(1970, [ML6])で、福建人が最も多く、主に福建語が使われているようだ。この店のアルファベット表記‘Hoe Kee’も多分福建語だと思うが、注文は華語でも通じた。

鶏飯(海南チキン・ライス/Hainan Chicken Rice)というのは、中国海南風の茹で鶏定食である。ご飯の形状やソースはいろいろあるようだが、ここのは、ご飯がボール状で、鶏はチリ・ソースで食べる。おいしい。店内は狭いが、店の横にテラス席があり、オープンエアで気持ちがいい。

馬六甲のチャイナタウン

[Chinatown1]
[Chinatown2]
◇Chinatownの街並み◇

マラッカ川右岸は東南アジア最古のチャイナタウンである。Melakaに中国人が来始めるのは15世紀であり、17世紀にはすでに右岸に華人集落が形成されていたらしい。道路は幅が狭く、老朽化した家が並んでいる。五脚基は幅が狭く、隣の家との間が柱ではなく壁になっており、歩道としての機能を果たしていない。もはや営業していない商店や人の住んでいない家も多く、人の気配は少ない。しかし車は別で、狭い道路をスピードを出して通りすぎて行く。

落ち着いた古いたたずまいを乱しているのは、家の前の路上駐車である。古くからのショップハウスには当然車庫スペースはないから、住んでいる人はみんな家の前に車を停めているのだ。Proton Saga(プロトン・サガ)も停まっている。Proton Sagaというのは、1985年に発売されたマレイシアの国産車第一号である。

人通りは多くないが、時おり西洋人観光客が歩いている。また、トライショー(trishaw/人力三輪車)がけっこう走っていて、やたらと声をかけてくる。Jl. Tokongにあるマレイ半島最古の華人の廟だという青雲亭(Cheng Hoong Teng Temple)は、観光客やお参りの人で賑わっていた。トライショーを雇ってガイドをしてもらっている西洋人もいる。

古いショップハウスをそのまま使っているアンティーク・ショップも何軒かある。中は暗くてひんやりしていて、アンティークや民芸品など、おもしろそうなものを売っている。バナナをぶらさげている果物屋や、店の前にかごいっぱいのドリアンを置いたお店もある。

金子光晴の『西ひがし』[ML22]の『マラッカのジャラン・ジャラン』という章では、 Melakaは次のように描写されている。

[マラッカ川]
◇左岸からチャイナタウンを望む◇
そして街なかは支那風なごった返しで、 際限もなく人間と招牌であふれた裏町横丁がつづき、雑鬧のあいだをくぐって胸の赤い燕が飛び交うている。広東、福建あたりの華僑と、マライ、ジャワ、スマトラあたりの土着の民、それにひょろながいヒンズーなど、汗ばんだ臭気がまじりあい、それが異様な脂汗の肩や腕をこすりあいながら往来している。そのあいだをまた容赦もなく、ながい棍棒を突込み、掻きわけながら洋車(ヤンチャー)が走っている。(p177-178)
これはおそらく、このオールド・チャイナタウンを描写したものだろう。今はもう雑鬧はないが、洋車の方はますます容赦もなく走っているようだ。

再び橋を渡り、左岸からチャイナタウンを眺める。黄土色に濁った川と古びた壁の色がマッチして、なかなか美しい、川のある風景である。

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更新日: 1999年2月13日(土)