大里暮色
prologue
初めての台灣旅行から、すでに3年が過ぎようとしている。今も鮮やかに思い出されるのは、赤い灯りの家々が並ぶ夕暮れの大里と、金瓜石の午後の静けさと、そして雨に濡れた淡水の古い町並みである。
侯孝賢映画の中の風景をこの目で見たくて、初めて台灣に出かけたのは、1994年のゴールデンウィークだった。私と侯孝賢映画との出会いは、1988年12月30日金曜日、シネ・ヴィヴァン・六本木での『童年往事 時の流れ(童年往事)』[C1985-34]だ。これはまた、台灣映画との出会いでもあった。その後、『恋恋風塵(戀戀風塵)』[C1987-71]、『悲情城市(悲情城市)』[C1989-13]、『風櫃の少年(風櫃來的人)』[C1983-33]、『ナイルの娘(尼羅河女兒)』[C1987-74]、『冬冬の夏休み(冬冬的假期)』[C1984-35]……と、日本に住む他の多くの人と同じように、製作順とは異なる順序で観てきた。最初に出会った『童年往事 時の流れ』は、今も私にとって最も好きな侯孝賢映画であり、最も好きな映画のひとつである。
『悲情城市』のヒットにより旧作が次々と公開された1990年ごろから、漠然と行ってみたいと思っていた。その思いを現実的なものにしてくれたのは、『心を揺する旅情 台湾の田舎町 侯孝賢監督の映画の舞台を訪ねて』という雑誌記事だった。そして、1993年末に出版された「朝日ワンテーママガジン16 侯孝賢ホウ・シャオシエン」[B51]の中の『映画で歩く台湾』という記事が、この旅行の計画および実現を大いに助けてくれた。
この旅行記は、この初めての台灣旅行を、侯孝賢監督の映画『冬冬の夏休み』『童年往事 時の流れ』『恋恋風塵』『悲情城市』と、台北を舞台にした楊徳昌監督の映画『牯嶺街少年殺人事件(牯嶺街少年殺人事件)』[C1991-16]のロケ地の探訪を中心に、日記風にまとめたものである。
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↑大里暮色
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→4月27日
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