SARSの季節/口罩時光
2003年5月4日(星期日)
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昨夜からあまり体調がよくない。「出かければ治る」と考えて強行するのが私のやり方で、いつもはたいていそのとおりになる。しかし今回は、無理をするのが怖い。7時の列車で新竹へ行くという計画はひとまず中止。J先生が買ってきてくれたお粥(30元=108円/杯)を食べてしばらく休み、9時頃に1階の丹堤咖啡へ行く(100元=359円)。今朝はおじいさんがおらず、「おじいさんの不在」ショットを撮る[写真1]。ここに2年前と変わらない空間があることが、不安な毎日の心の拠りどころになっていた。おじいさんの不在は私たちを不安にさせる。 体調は大丈夫そうなので、やはり新竹[xin1 zhu2](新竹市)へ行くことにする。外はマスク姿が日ごとに増え、3割を超えるくらいになっている。開放空間では不要だとテレヴィでも言っているので、私たちは車内でしか着用していない。 10時24分の自強1015次に乗り、11時30分に新竹に着く(180元=646円)。新竹に来た目的はふたつある。近代建築めぐりと、新竹都城隍廟の廟口小吃だ。さっそく、松ヶ崎萬長設計、1913年竣工の新竹車站(旧・新竹駅)を見る[写真2]。新竹を訪れるのはほぼ初めてだが、内灣線への乗り換え駅なので、これまでに何度か通っている。なのに、こんな立派な駅舎だと気づかずにいたのは不覚である。写真で見ると、壁の白と付け柱などの黄土色のコントラストが美しかったが、改修されたらしく全部グレイのコンクリート色になっており、ちょいと残念だ。 ほかの建築見物はあとまわしにして、新竹都城隍廟へ直行する。境内が屋根のある屋台街になっており、日曜のお昼はかなりの賑わいだ[写真3]。新竹は米粉ビーフンの本場なので、まず阿城號の炒米粉(30元=108円)と、蘇家の貢丸米粉(40元=144円)[写真4]を食べる。台灣の米粉は、実はこれまであまり印象になかったが、やっぱり場所は場所だけのことはありますわ。特に炒米粉が、麺がシコシコでおいしかった。このほか、ここの名物である林家の肉圓(30元=108円)と郭家の潤餅(35元=126円)を食べ、特売の酸梅湯(20元=72円)を飲む。 満腹になったところで散策を開始。路地と一体化するように建つ楊氏節孝坊を見つける[写真5]。格別美しい路地ではないが、街並みへの溶け込み方が絶妙だ。台北の二二八和平公園には、移築された牌坊がふたつあるが、やはり街の中にあるほうがいい。一見調和しないように思える異なる時代の建物が、並びあい、重なりあって、生きた街並みがかたちづくられ、その街独特の空気が生まれる。 城隍廟の近くから延びる北門街は、古い建物の残る老街である。中華バロック[写真6]や煉瓦づくりの建物を探しながら、この通りを歩く。進士第(鄭用錫宅第)、新竹長和宮、新竹水仙宮など、清朝時代の中国建築も見られる。 1926年竣工の新竹市政府(旧・新竹州廳)、1934年竣工の新竹市第一信用合作社(旧・新竹信用組合)、1937年竣工の新竹消防博物館(旧・新竹消防署)、1933年竣工の新竹市影像博物館(旧・新竹有樂館)、梅澤捨次郎設計、1935年竣工の台灣菸酒公司新竹營業所(旧・新竹専賣局)、1925年竣工の旧・新竹州立圖書館など、点在する近代建築を見て歩く。中でも、旧・新竹信用組合[写真7]と旧・新竹専賣局[写真8]の丸い建物が私好みだ。遠くからもよく見えた新竹市政府[写真9]は、台北賓館と同じく写真だったのがショックである。台北賓館とは違い、凹凸もあり、実物大の模型をかぶせたような、芸の細かいものだ。巨大な飛び出す絵本に入り込んでしまったかのような異様さである。 駅前の金石堂書店で建築の本を2冊買い(549元=1971円)、4時23分の自強1022次に乗る。5時29分に台北に着き、駅前の大衆唄片に寄る。私は“美麗時光”のサントラを、J先生は李心潔の新譜と李心潔主演ドラマのVCDを買う(954元=3425円)。 荷物を置いて、捷運で忠孝復興へ移動。四川料理のKIKI餐庁へ夕食を食べに行く。雑誌などで「おしゃれなレストラン」と紹介されているこの店はほぼ満席で、客の98%は若者だ(著者を含む)。SARSのせいで外食産業は打撃を受けているが、その影響は一様ではない。最も影響が大きいのは、一家揃って外食する家族や観光客が中心の店で、庶民的な食堂や屋台は多少減っている程度、若者中心の店にはあまり影響がなさそうだ。 この店に来た目的は辣子鶏丁[写真10]である。蘇州で偶然出会って以来、メニューに‘辣子鶏’または‘辣子鶏丁’という文字を見るたびに注文してきた。しかし鶏肉の炒め物が出てくることが多く、ちゃんとした辣子鶏を食べるのは、これがやっと3度目である。最初に蘇州で食べたものは、唐辛子をふんだんにまぶしたカリカリの唐揚げで、本格的ではないが、ビールによく合って素朴においしかった。昨年香港で食べたものは、花椒がしっかり効いた本格的なもので、また食べに行きたくなる味だった。今回は、花椒も唐辛子もそこそこ効いているが、無難な味でもの足りない。台北での辣子鶏探しはこれからも続く。 もうひとつの目当ては蒼蝿頭[写真11]。前回、皇城老媽川菜館で食べて以来のお気に入りだが、前回のほうがおいしかったように思う。辣子鶏丁、蒼蝿頭、腐乳空芯菜、台灣生啤で781元(2804円)。 向かいには、微風廣場というショッピング・センターがある。京華城と並んで、最近のガイドブックに必ず紹介されている店だ。入口に、現在の来店客数を表示した電光掲示板があり、人が出入りするたびに数字が変わるのがおもしろい。しかし、中はこれといって目を惹くものもなく、あまり垢抜けた感じでもないので、早々に引き上げる。捷運で台北車站へ戻り、大亞百貨の誠品書店で閉店までねばり、またも建築の本を2冊買う(800元=2872円)。今日の歩数は23158歩だった。 浮浪者が感染を広げる可能性があるとして、ここ数日、なかば強引な体温測定などが行われている。今日、感染の疑いのある人が2人見つかったらしい。龍山寺に常駐していたので、4月30日以降に訪れた人は注意するよう呼びかけている。今回の旅行では、萬華區には足を踏み入れていない。訪台直前に院内感染が起きた仁濟醫院が龍山寺の隣だし、地域感染の可能性が高いと報道されていたからだ。龍山寺も見ていないし、西門町も見ていない。これでは台北へ行ったとは言えないのではないか。 | |
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