SARSの季節/口罩時光
2003年5月2日(星期五)
1 |
今日は台北を離れて、深坑[shen1 keng1](台北縣深坑郷)と石碇[shi2 ding4](台北縣石碇郷)へ行く予定だ。深坑郷は台北市の南東部、文山區に隣接しており、その東隣が石碇郷である。さらにその東は、北側が平溪郷、南側が坪林郷だ。瑞芳から平溪線に乗って平溪へ行くと、台北から離れていくように感じる。実際は、平溪郷のほうが瑞芳鎭よりも台北に近い。 テイクアウトの生煎と豆漿で朝食を済ませ(60元=215円)、まず捷運で木柵まで行く。今日からマスクはN95。外観は抵抗があるが、内側が口につかないので、着用してみると普通のマスクより楽だ。息が漏れると眼鏡が曇るのと、マスクが大きくて眼鏡が浮いてしまうのが難点である。 木柵から660番のバスで深坑へ。真夏のような晴天で、自然に気分がウキウキする。深坑は豆腐料理が有名で、近年観光客を集めている町だ。入口に巨大な榕樹[写真1]がある深坑街[写真2]が、観光地としての深坑の中心であり、老街と呼ばれている。さして長くない老街は、入口近くにはお菓子屋が、中ほどには豆腐料理屋が、その先には土産物屋などが並ぶ。老街といえば、中華バロックや煉瓦造りの建物が連想されるが、そういった建築はあまり多くない。徳興居と呼ばれる中華バロックの建物[写真3]が一番の目玉である。ほかには、煉瓦造りの家とアーチ型の亭仔脚が少しばかりあるだけだ。 お菓子屋の一軒で、店先にきれいに並ぶ色とりどりのまんじゅうから、3個選んで買う(50元=180円)。客家の伝統的なお菓子のようだ。店のおばさんは、肉などのおかずっぽい餡が入ったものを勧めるが、甘そうなものを選ぶ。紅豆餡のは無難でおいしかったが、塩辛い変わった味のや、すごく甘いのもあった。西瓜汁でのどの渇きを癒す(35元=126円)。西瓜汁は、前回の台灣旅行でお気に入りに追加された飲み物だ。今回はこれが初めてで、シンプルなおいしさにあらためて感動する。 深坑には、清朝時代からこの地で栄えた黄家の旧居がいくつか残っている。上述した徳興居もそのひとつだが、これ以外は伝統的な閩南式の三合院だ。中でも永安居[写真4]は、最も保存状態がよく、三級古蹟に指定されいる。一般公開されているらしいので行ってみたが、残念ながら週末のみの公開だった。 昼食はもちろん豆腐料理である。豆腐料理屋は、深坑豆腐発祥の地といわれる集順廟を中心に、いくつも並んでいる。町中に臭豆腐の匂いが充満しているという噂もあったが、特に苦手ではないせいか、あまり感じない。集順廟の屋台街と古早厝というお店のほかはすいていたので、古早厝に入る。肥牛臭豆腐[写真5]、紅焼豆腐、炒豆苗、台湾啤酒で480元(=1723円)。「台灣に来たら絶対に深坑へ行くべし」というほどではないが、一度くらいは豆腐を食べに来てもいいと思う。 666番のバスで石碇へ移動。バスが欣欣客運だったので、J先生と「熊欣欣はどうしているのだろうか」と話す。ずいぶん長く見ていない気がする。他の客が皆降りてしまい、私たちだけを乗せたバスは、雲行きの怪しくなった石碇に到着した。川が流れ、緑に囲まれた、ちょいと平溪を思い出させる町である。 石碇は、タイトルにあるとおり、『シーディンの夏』[C2001-19]の舞台であり、ロケ地でもある。崩山溪に沿った石碇東街と石碇西街がこの町の中心だ。石碇東街には、吊脚樓[注1]と呼ばれる半水上家屋が建ち並んでいる[写真6]。通りはその建物の中を通っているらしく、アーケード状で路地のように狭い[写真7]。『シーディンの夏』で、主人公の小志(黄健瑋)の家があったのはここである。 アーケード街の入口附近には食堂がいくつかあり、平日の昼間だというのに賑わっている。しかし、一歩アーケードの中へ入ると暗くて静かだ。映画で小志の家だったと思われる店は営業していた[注2]が、多くの家は入口を閉ざし、空き家らしきところも少なくない。すでに内部が壊されている家もある。途中で、『シーディンの夏』で小志とElisa(Manon Garceau)が仲直りをする石のベンチを見つけた[写真8]。アーケードを出た先には、これも映画に出てきた鍛冶屋があった。 萬寿橋を渡って石碇西街へ。石碇の中心である集順廟があり、その隣には石碇國小がある。『シーディンの夏』でElisaが英語を教えていたところ【映画】だ。ほかにも映画に出てくるところを探したが、雨が降り出したので適当に切り上げた。 このあとは、新店を再訪することにする。昨日買った‘美麗時光 張作驥及其獨立製片’[B595]という本で、『きらめきの季節/美麗時光』に出てくる通りの名前がわかったからだ。666番のバスで終点の景美まで行き、捷運で新店市公所へ移動する。 目的の力行路11巷はすぐに見つかった。汚いどぶ川に沿った、人が二人やっと通れるくらいの狭い路地だ。川側にも家があるところ[写真9]と、道が川に面しているところ[写真10]が交互にある。川側の家は、川の上に張り出した半水上家屋だ。両側に家の並ぶ暗い路地は、他人の家の中を歩いているようで緊張する。かつて香港にあった調景嶺を思い出させ、向こうから張學友が逃げてきそうな気がする。 蛍光灯のあった路地【映画】やどぶ川に架かる橋【映画】、川に張り出したヴェランダのようなところ【映画】、川に面した家【映画】など、『きらめきの季節/美麗時光』に出てきた場所をいくつか見つける。小偉(范植偉)や阿傑(高盟傑)の住む家の近所が、このあたりで撮られているようだ。彼らがどこかへ出かけたり、外から帰ってきたりするときに通るところで、その先にあるはずの彼らの家は、全く別のところで撮影されているらしい。 捷運でいったんホテルに戻り、再び捷運で國父紀念館へ移動。長白小館へ酸菜火鍋を食べに行く。鍋にはあらかじめ白菜と豚肉が入っており[写真11]、追加の肉を豚、牛、羊から選ぶ。これに春雨と青梗菜がついているのが基本セット。自分で作るたれは、胡麻が2杯、腐乳、大蒜、韮が半杯ずつの配合が標準らしい。これに豆板醤と香菜をたっぷり追加する。2人用の酸菜火鍋に、追加の具の魚丸と貢丸の盛り合わせ、小菜、台灣啤酒で1120元(4021円)。かなり贅沢な夕食だったが、鍋はとてもおいしかった。エアコンが効きすぎていて、熱い鍋を食べる臨場感に欠けたのが残念だった。 捷運でホテルに帰る。今日の歩数は、約25000歩だった[注3]。 | |
2 | ||
3 | ||
4 | ||
5 | ||
6 | ||
7 | ||
8 | ||
9 | ||
10 | ||
11 |
- [1]吊脚樓
- 川床から石柱を立てて、その上に家屋を建てたもの。
- [2]小志の家だった店
- このときは、営業している雑貨店を見て映画に出てきた店だと思ったが、後日映画を再見して、間違いであることがわかった。映画に出てきた店【映画】は、このときも営業していなかった。
- [3]今日の歩数
- いったんホテルに戻ったあと、万歩計を忘れてしまったので、J先生の歩数を足した概算である。
■
←5月1日
■
↑SARSの季節/口罩時光
■
→5月3日
■
◆ 台灣的假期 ◆ しゃおがん旅日記 ◆ ホームページ ◆ Copyright © 2003-2004 by Oka Mamiko. All rights reserved. 作成日:2003年6月29日(日) 更新日:2004年5月30日(日) |