SARSの季節/口罩時光
2003年4月30日(星期三)
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4月30日、水曜日。鎌倉。くもり時々雨。肌寒く、陰鬱な日和である。 まず、台灣のSARS最新情報をチェック。患者数の増加は12人。和平醫院に続き、仁濟醫院での院内感染が伝えられている。和平醫院だけで治まるのでは、と楽観的観測をしていた私には、ショッキングなニュースである。 初日の昼食は、イワタのホットケーキ【食】と決めている。ところが、ゴールデン・ウィーク中にもかかわらずお休み。不吉である。代わりにインド料理のT-SIDE【公式】でランチ[写真1]を食べ、2時14分のエアポート成田[写真2]に乗る。プラットフォームにも車内にも、旅行者らしき人は見当たらない。成田駅を過ぎてしまうと、乗客は本当に数えるほどになった[写真3]。 成田空港第一ターミナルは閑散としている[写真4]。台灣入国は非常に厳しくなっているらしい。チェックイン時、「10日以内に中國、香港、新加坡、トロント、ハノイへ行ったかどうか」をチェックされた。行った人は10日経つまで隔離されるらしく、同意しないと飛行機に乗れないようだ。トラベルキオスクは、SARSを利用した売り上げアップに余念がない。「世界各地にてSARS大流行!!」という、まるで感染しないと流行遅れのような看板が用意されている[写真5]。マスクを3枚買うと、除菌ティッシュがもらえるらしい。 出発ロビーではほとんどマスク姿を見かけなかったが、ゲート[写真6]へ移動すると状況は一変した。乗客も職員も、ほとんどの人がマスクをしている。私とJ先生が椅子に座ると、向かいにいたN95着用の台灣人母子は、これ見よがしに移動するほどの警戒ぶりだ。早々に外していたマスクを、再び着用する。乗客は台灣人がほとんどで、日本人観光客は全くと言っていいほど見かけない。ツッコミを入れたくなるちゃらちゃらしたOL3人組もいない。「馬鹿女もゲートの賑わい」なので、全くいないと寂しい。ここには、浮かれたヴァカンス気分というものが皆無である。 機体は左右3列ずつの小型機に変わっている。それなりに埋まってはいるものの、満席にはならない。上海帰りの乗客がいるらしく、まわりに乗務員が集まって大騒ぎだ。結局そのまま乗って行ったようだが、隔離されたのだろうか。ノースウェスト航空(NW)91便は、定刻より早く、6時45分ごろ離陸した。 自由時報を読む。ほとんどの記事がSARS関連で、仁濟醫院が封鎖されたニュースが中心だ。和平醫院の患者やスタッフの隔離先も、細かく報じられている。中興醫院の医療スタッフにも疑い例が出たらしい。前の人が読んでいる新聞は、すでに封鎖が決まったかのような報道ぶりだ[注1]。香港からのツアー客に疑い例が出たため、麒麟大飯店が休業したとの記事もある[注2]。休校がいくつかと、学級閉鎖が数十くらい。初めて、旅行を決行したのは間違いではなかったかという不安に襲われる。一方で、封鎖されているのは病院だけらしいこと、ホテルの休業はほとんどなさそうなこと、休校の規模もそれほど大きくないことなど具体的な状況がわかり、安心もした。いつものようにまずい夕食[写真7]のあとは、SARS対応の健康調査票が配られる。9時40分ごろ中正國際機場に着陸。 耳温を測り、無事に検疫を通過。外には、出迎えの人でできた花道もない。10時20分発の大有巴士で台北へ移動(100元=359円[注3])。バスに乗り合わせた人が発症した場合に備え、用意された名簿に名前と連絡先を書き込む。 台北へ向かう道路沿いでは、檳榔屋が一段と派手さを増している。なぜかFENDIやARMANIといった有名ブランド名の店が多い。ガラス張りの店内に座る超ミニ・スカートの小姐は、もちろんマスクは着けていない。 台北車站でバスを降り、最近の定宿である華華大飯店へ向かう。街には、マスクの人はほとんどいない。華華大飯店は、いつもどおり営業していた。とりあえずひと安心だが、SARS一色のニュースを見ると、またしても暗い気持ちになった。 今回の旅行では、万歩計を装着している。今日はわずか6364歩だった。 | |
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- [1]中興醫院
- 結局、封鎖されるほどの事態には至らなかった。
- [2]麒麟大飯店
- 香港人観光客は結局SARSではなかったようだが、やはり休業した。
- [3]台灣元から日本円への換算
- Citi Bankからの引き出しレートの平均である1元=3.59円で計算し、小数点以下を四捨五入(以後同様)。
- 特に明記しないかぎり、交通費、入場料は1人分、食費は2人分、宿泊費は1部屋分である。
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