第12回東京国際映画祭

正義の華ティーチイン

参加者(敬称略)
ゲスト●Manop Udomdej(監督)
司会、タイ語-日本語通訳
日本語-英語通訳●王愛美


■司会(日本語):まず観客のみなさんへ挨拶を。
◆監督(タイ語):今日は観に来て下さってありがとう。この映画を東京国際映画祭で上映していただいたことに感謝する。
◆この映画は理解するのが少し難しいと思う。それはマフィアはタイの問題で、日本にはあまりないと思うからだ。この映画を観ても楽しく感じないかもしれない。わからないところがあったら遠慮なく質問してほしい。

■観客1(英語):タイ映画を観るのは初めてだが、気に入った。男がロープで吊るされるシーンが面白かった。よくできたシーンだと思う。いろいろな名前が出て来て混乱したが、「ダン・チャーリー」とは何だったのか?
◆監督(英語):ダン・チャーリーというのは実名ではなく、ギャングの世界のコードネーム。アファイという男がダン・チャーリーだった。彼は広東語を話しており、香港から来たギャングだと思われる。
■観客1:もうひとつ、「死の花」と呼ばれていた男は警察か?
◆監督:警察だが、どちらかというと象徴的な存在。警察として合法的に犯罪者を殺すことで、犯罪者はいい死に方はできないということを象徴している。

■観客2(日本語):たいへん素晴らしい。タイのアクション映画は、ファンタの『エキストラ・リーガル バンコク大捜査線』が初めてでこれが2本目だが、日本のアクション映画よりレベルが高い。アクション映画は、仲間意識の強いチームで作られることが多いと思う。主演俳優は『エキストラ・リーガル』にも出演していたが、こういう俳優と一緒に映画を作って何かエピソードがあったら教えてほしい。
◆監督:映画を理解していただいてありがとう。この映画はアクション映画ではなく、ロマンティック・アクション映画だと思っている。また、フィルム・ノワールに通じる雰囲気を表現したいと思って作った。ストーリーは非常にシンプルだが、語り方を複雑にした。そのため、タイでは、批評家の受けも悪く、ヒットもしなかった。コンペに出ているタイ映画(筆者注:『ナン・ナーク ゴースト・イン・ラヴ』だと思われる)はヒットしたが、この映画は50万米ドル損失した。来年に向けて映画を作るのが困難な状況である。

■観客3(日本語):タイ映画が大好きで何本も観ている。監督の前作『フリンジ・オブ・ソサイエティ』も観た。前作は複雑な心理描写があったが、今回はあっさりしていると感じた。8年の間に何か心境の変化があったのか?
◆監督:その8年前の映画は福岡で上映されたが、政治色が強い作品である。フィルム・ノワールというカテゴリーにはまっていたので、ある意味ではわかりやすく、今回の方が難しく感じると思う。前作は失敗だったので、もっとシンプルなストーリーを考えたが、複雑な方法で描いてしまった。
◆どういうタイプの映画を撮りたいかとよく聞かれるが、自分はラブ・ロマンスやコメディも撮れると思う。大事なのはストーリーであり、それを描く監督としての視点は前回も今回も変わっていない。どういうテーマを扱い、それをどう表現するかが大事である。

■観客4(日本語):タイ映画はほとんど公開されないので、観ることができて嬉しい。最後に主人公のロップはキアンを殺すことができたのに、殺さなかったのはなぜか。
◆監督:(筆者注:監督に質問が正しく伝わらなかったため、監督は別のことを話し始めた。最後に警察がロップを殺した理由であると推測される。)理由は三つある。一つ目は、警察はブラックリストに載っている人物を殺していいことになっている。しかしそれを画面で直接見せることは許可されなかった。二つ目は、犯罪者は普通の死に方をしてはいけないという自分からのメッセージである。三つ目は、ロップが、もう生きていたくない、死にたいと思っていたからである。
◆キアンを殺さなかったのは、恋人を殺したのがキアンではないことに気づいたからである。
■観客4:実はよく理解できなかったが、ガン・アクションの素晴らしさに惹かれて最後まで観た。影響を受けた監督は誰か。
◆バンコクの批評家からは、マカロニ・ウェスタンみたいだと言われた。銃を使っているからそう見えるかもしれないが、銃を刀に変えれば侍映画にも見えると思う。自分は日本映画が好きで、若い頃たくさん観た。宍戸錠や小林旭が好きだ。『七人の侍』など黒澤明監督や小津安二郎監督からも影響を受けている。襲撃のシーンや一対一で戦うシーンに日本映画の影響が見られると思う。

■観客5(タイ語):「死の花」がロップを殺さなかったのは、ロップが「寝不足だから今夜は眠らせてくれ」と言ったからか?
◆監督:そうだ。しかし生き続けさせるわけにはいかないので、最後に殺した。
■観客5:次のプロジェクトはどういう作品か。
◆監督:おばけの映画だが、シリアスな部分もあるもの。次作を来年の東京国際映画祭で上映したいと思っている。

映画人は語る1999年10月31日ドゥ・マゴで逢いましょう'99
ホームページ
Copyright © 1999-2004 by OKA Mamiko. All rights reserved.
作成日: 1999年11月4日(木)
更新日:2004年12月11日(土)