ドゥ・マゴで逢いましょう'99
1999年11月6日(土)
11月6日、土曜日。晴れ。
真夜中まで ◇ 'Round About Midnight 通算10本目は、コンペティションで、和田誠監督の『真夜中まで』。和田誠の映画はこれまで観たこともなく特に興味もないのだが、李嘉欣が出るというので観に来た。とはいっても、別に李嘉欣のファンではない。
■舞台挨拶
ゲストは、和田誠監督、撮影の篠田昇、音楽の立川直樹、そして主演女優の李嘉欣。もうひとりの主演、真田広之はロンドンで公演中とのことで、ファクスのメッセージが読み上げられた。
■映画について
殺人を目撃した中国人ホステスと偶然巻き込まれたジャズ・トランペッターが、殺人の証拠物を探す2時間をリアルタイムで描く映画。おもしろそうだ。あるいは、真田広之と李嘉欣が夜の東京を走りまくる映画。かっこいい映画が撮れそうだ。しかし残念ながら、この映画はそれほどおもしろくもないし、かっこよくもない。アイデアはおもしろいのに、それが映画として定着していない。撮影もひどく、夜の東京にはまるで空気がないようだ。ラストにいたっては、あまりにも「容易に類推可能」なため、観ていて恥ずかしくなった。ときおり挿入されているお笑いシーンはまわりから浮いていて、これみよがしな特別出演ゲストの存在感とあいまって、違和感と嫌悪感が残る。李嘉欣は、特筆すべき点はないものの、一人で日本映画に参加して、中国人ホステスとしては申し分のない日本語を話して、唄まで唄って、なかなかがんばっているのでファンの人は観てあげて下さい。
■ティーチイン
質問内容をみる限り、李嘉欣目当てに来た客はけっこう多いようだ。
◇◇◇
昼食の時間を大幅に過ぎているので非常に空腹なのだが、思考力も低下して食べたいものを思いつかない。かなり歩き回った挙句、たまに行く焼肉屋でランチを食べ、思考力を回復する。
シュリ ◇ Shiri ◇ Shuri 次は特別招待作品の『シュリ』。大ヒットを記録したという韓国映画である。場所は渋谷公会堂で、映画の前にアジア映画賞授賞式がある。
■アジア映画賞授賞式
特別招待作品の司会はいつもプロの司会者か何かの若い女性である。容姿端麗で綺麗に話せる人でないとお客様(もちろん我々ではなく招待客)に失礼だと思っているのかもしれないが、映画のことなど何も知らず(推測)、誰かが書いた原稿を読むだけである。この原稿は毎年、毎回、ほとんど同じなのだが、情報量のない挨拶などを一通り述べた後、「申し遅れました、わたくし…」と言って自己紹介をするという、ひどい代物である。「申し遅れました」というのは申し遅れたことに気づいて謝る言葉ではないのか。原稿を用意するのなら、申し遅れないようにすべきだろう。
アジア映画賞授賞式は司会を市山さんに交代して始まったのでひとまず安心。アジア映画賞というのは、コンペティション以外の部門も含め、アジアで製作された映画に贈られる賞である。アジア映画すべてが対象というわけでもなく、Kiarostamiなど大物の映画は入っていないようだが、その基準はよくわからない。審査委員長の崔洋一監督、審査員のトニー・レインズ(映画評論家)、ポール・イー(映画祭コーディネーター)、深津純子(朝日新聞記者)、平野博靖(キネカ大森支配人)が登場。アジア映画専門館となったキネカ大森の支配人が入っているところが渋く、拍手の音もひときわ大きい(私だけ?)。
対象作品から最終的に絞り込まれたのが『ダークネス&ライト』『ルナ・パパ』『フラット・タイヤ』『マラナ・シムハサナム』『DEAD OR ALIVE 犯罪者』の5本。この中から『ダークネス&ライト』がアジア映画賞に選ばれた。恭喜、恭喜!すでに帰ってしまった張作驥監督に代わって主演女優の李康宜が登場。監督からはファクスでメッセージが届いていたが、その内容がプログラムに載っているメッセージと同じだったのはなぜ?この後『DEAD OR ALIVE 犯罪者』を特別賞とすることや、各候補作への批評など、崔洋一監督は1時間くらい喋りまくり、さすがに長すぎた。長いわりには情報量が少ないのがさらに困りものである。他の審査員もせっかく出てきたのに崔洋一ばかり喋っていて気の毒だ。王愛美さんは英語通訳に四苦八苦し、横で市山さんが心配して太った体を小さくしていたのも気の毒であった。
■舞台挨拶
ゲストは、姜帝圭監督と、主演の「韓国の佐野史郎」、韓石圭。彼が主演していた『八月のクリスマス』はすごくよかったが、彼個人には別に興味はなかった。しかしスーツ姿はなかなか感じがよく、好青年である。見た目は「韓国の佐野史郎」でも、とても人気のある大スターだということで、今日も大応援団が来ていてびっくりした。司会が元の女性に変わり、インタビューが始まる。上映前なので内容に踏み込めないうえに、あらかじめ用意された質問、それを読むだけの司会者、用意してきた答え、これではおもしろいはずがない。どんなにおバカな質問でも、質問者が自分の聞きたいことを聞き、それにその場で答えるティーチインの方がずっとおもしろいとあらためて思った。
■映画について
アクションとサスペンスと「愛と感動」と「南北分断の悲劇」を全部詰め込んだ大作。「ハリウッド映画を越える」等と宣伝されているようにハリウッド的なものを狙っているので、ハリウッドの主流アクション映画が好きな人にはおもしろい映画だろうと思う。私ははっきりいってつまらなかった。アクションにはスタイルがなく、サスペンスはバレバレで、感動は「どこが?」という感じである。この程度で「分断の悲劇をきちんと描いている」などと評価するのは、『フェイス/オフ』で「ドラマがしっかりしている」などと言うのと同様、浅すぎであろう。韓石圭もこういう役が合うとは思わない。
◇◇◇
今日は、ゲスト的には豪華だったが、映画的には本映画祭一のハズレ日であった。『龍の髭』で夕食を食べていたら、同じテーブルに同じく『シュリ』帰りとおぼしき人々がやってきて、香港映画の話などを始めた。そのためこちらは全く喋ることができず、黙々と食べて非常に疲れた。
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