第10回東京国際映画祭
『河』ティーチイン
- 参加者(敬称略、以下同様)
- 蔡明亮(監督)、李康生(主演)、
- 司会(市山尚三)、北京語-日本語通訳(小坂史子)、日本語-英語通訳
- 言語
- 北京語
- ★李康生の演技は、いつも不思議な空間を作り出している。どういうことを考えて演技しているのか。
- 監督は俳優の演技をあまり制約しないので、自由に演じることができる。
- (監督談)それは、脚本が不完全だということだ。
- ★お父さん役の苗天について。(蔡明亮に)
- 彼はアクション映画の悪役を中心にやってきた俳優で、今年73歳、俳優としては50年のキャリアを持つ。この役を引き受けるにあたっては、それまでの役とのギャップからかなり悩んだようだが、最終的には引き受けてくれた。役作りのために、「ゲイの集まるサウナなどを紹介しましょうか」と言ったところ、「けっこうです」と断られたが、実は教えた場所には全部行ってみていたようだ。
- ★蔡明亮監督の映画は、よく雨が降り、非常に湿っている感じがする。これは意図的なものか。
- 「河」を撮る前に、「河」の次の作品としてフランスから出資する話があり、雨がざぁざぁ降る話を考えた。しかし「河」を撮ってみて、自分はすでに雨がたくさん降る話を撮っていることに気づき、次はそうでないものにしようと考えた。しかし、実際に撮ってみたら、やはり雨がざぁざぁ降る話になってしまった。大きな公共住宅を舞台にした話なのだが、しょっちゅう雨を降らすので、ロケ隊を見ると住民が洗濯物を取り込むようになってしまったくらいだ。意図的にやっているわけではないが、自分の傾向として雨などを好むということがあるのだろう。以前に占いで「あなたの人生は水びたしだ」と言われたこともある。
- 今話した次回作は、李康生と楊貴媚主演で、すでに撮り終わっている。これを持って来年の東京に来たいと思っている。
- ★「河」というタイトルはどういう意味を持っているのか。
- 台北には淡水河という川が流れており、これは台北を代表する川である(東京でいうと隅田川のようなもの)。冒頭に出てくる川がこの淡水河だが、非常に汚れていて死にかけている。「河」というのは、人生そのものの喩えでもあるが、この映画では特に、苦しむ人の姿の象徴である。
- ★李康生の首が歪んだ演技が真に迫っていたが、どんな演技指導をしたのか。
- これは李康生の実際の体験に基づいている。「青春神話」を撮り終えた1か月後くらいに彼はこの奇病にかかり、私は彼と彼の父親と一緒に、西洋医学から東洋医学、お祓いにいたるまであちこち駈けずり回った。実際の彼の病状は映画よりひどく、首がかなり後ろの方を向いてしまっており、ご飯を食べるときには、顔を前に持ってきて食べさせても、手を放すとまた後ろに戻ってしまうというような状態だった。彼の苦しむ様子を見て、ヴィデオに記録しようという考えが浮かび、迷ったが、結局録画しなかった。病気が治ったあとで、彼のこの経験を映画として残したいと考え、この映画を企画した。
- この役を演じることで病気が再発するのではないかと心配し、事前にお医者さんに相談したりもした。しかし撮影が始まると、実際に苦しんでいたときのようにリアルに演じることを彼に要求した。
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映画人は語る
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1997年11月1日
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ドゥ・マゴで逢いましょう'97
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