第13回東京国際映画祭

ジャッキー ティーチイン

- 参加者(敬称略) -
ゲスト●Fow Pyng Hu(監督)
司会●金谷(?)
英語-日本語通訳●山根ミッシェル


■監督(英語):共同監督のBrat Ljatifiも来る予定だったが、子供が産まれそうなので、奥さんと一緒にいるために来日を中止した。この映画は中国系移民の話であり、中国系ではない彼との共同監督は不思議に思われるかもしれないが、彼も似たような環境で育っており、共感できるものがあったようだ。

■観客1(日本語):この映画はどのような観客を対象に、どういったことを感じてもらいたくて作ったのか?
◆監督:自分はアートスクールの出身で、これまで短編アートフィルムを数多く撮ってきた。プロデューサーから「長編を撮ってみないか」と言われて作ったのがこの映画である。
◆対象とする観客は特に設定していない。
◆この映画では、ストーリーを語るのではなく、雰囲気を伝えたいと思った。
◆伝えたかったことはふたつある。ひとつは、移民の一世と二世との間のギャップである。もうひとつは、ある種の居心地の悪さである。それは、隣に知らない人が座っていて、その人の息づかいが聞こえてくるような居心地の悪さである。

■観客2(英語):この映画は台詞は少ないが、言語的には豊かである。オランダ語、英語、幾つかの中国語、すなわち北京語、広東語、おそらく福建語が使われている。その意図は?
◆監督:Jackyと家族が話していたのは福建語ではなく、チンケン話という方言である。上海の近くのもので、10万人程度が話しているに過ぎない少数言語である。
◆中国系移民といってもその出身地は様々であり、方言はその違いを表している。また、オランダにいる中国人には、オランダ生まれの人もいれば、移住してきた人もおり、短期間滞在しているだけの観光客もいる。言語によってそのような多様性を伝えたかった。例えばGaryは、北京からオランダに移住した人で、北京語を話している。JackyとGaryはオランダ語で会話するが、Garyのオランダ語には北京語訛りがある。

■観客3(日本語):GaryがJackyのお母さんの誕生日に京劇の扮装をして唄うが、お母さんに追い出されてしまうシーンがある。どうしてJackyは、彼が友人であることや、お母さんを喜ばせようと思って唄ったことなどを説明してあげないのか?
◆監督:Jackyというのは、今までお母さんの言うとおりに生きてきて、自分で考えて、何かを選択したり決定したりしない人間である。だからGaryの件についてもそうだし、お母さんが結婚相手を勝手に決めても拒否しないが、やってきた婚約者のために何かしてあげることもない。

■観客4(日本語):この映画はオランダではすでに公開されているか?
◆監督:公開されている。
■観客4:一般のオランダ人は、使われている言語を全部理解できないと思うが、字幕を付けたのか?
◆監督:オランダ語字幕を付けた。オランダ人の観客には中国語の方言の違いを区別できないが、オランダ語の中にも方言はあり、例えば映画に出てくるタクシーの運転手は、アムステルダムのスラングを多用した言葉を使っている。だから、言語的多様性の雰囲気はなんとなく理解してもらえていると思う。
■観客4:映画の反響は?
◆監督:オランダの中国人社会は閉鎖的なので、オランダ人の観客にとっては初めて中国人社会を目にする機会になったと思う。
◆批評家からは好意的な評価をもらい、満足している。

■観客5(日本語):共同で監督していることは、いろいろな言語を使ったことと関係があるのか?
◆監督:共同監督はユーゴスラヴィア人であり、中国語は全く理解できない。しかし、各シーンの内容などはちゃんと伝えて理解し合っており、支障はなかった。
◆通訳(コメント):最初に「共同監督のBrat Ljatifiも似たような環境で育った」という話があったが、それは彼の家族がユーゴスラヴィア移民であるということだろうと思われる。

■観客6(日本語):香港人と思われる、広東語を話す観光客のカップルが出てくる。彼らの出てくる意味は?
◆監督:二世や移民だけではなく、単なる観光客として短期間滞在するだけの中国人もいる。いろいろな中国人を描くために出した。香港人にしたのは、オランダに観光にやってくる中国人の大半が香港人だからである。

■観客7(日本語):GaryとJackyの関係には、ホモセクシャルを匂わせる雰囲気があったが、そうか?
◆監督:Garyは、もっとJackyに近づきたい、もっとJackyを知りたいと思って、自分から彼に近づいていく。だからGaryにはそういう気持ちがあると思う。しかしJackyには全くそんな気はない。彼は、回りの人間をよく観察したり分析したりするタイプではないので、その気もないし、気づいてもいない。

映画人は語る2000年11月5日ドゥ・マゴで逢いましょう2000
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作成日:2000年11月21日(火)
更新日:2004年12月11日(土)