イエイエ上海 page 1
「1999年の夏休み」[C1988-5]は、上海で過ごすことになった。日帰りの深[土川]と回帰後の香港を除けば、初めての本格的な大陸旅行である。
大陸に対する関心は昔からあった。特に近年は、中華圏に多大な関心を寄せている。それにもかかわらず、その中心ともいうべき大陸についてはなんとなく避けていた。大陸はあまりにも広く、日本と大陸との古来からの関わりは、あまりに長く、緊密で、そして重い。例えば本屋に行けば、中国と名のつく本だけでも数えきれないほどあるだろう。考えただけでうんざりする。要するに大陸は、どこから手をつけていいのかわからない巨大なカオスであり、ひとたび足を踏み入れてしまえば、一生抜けることのできない深い世界が待ち受けているような気がする。それが最近、やっと大陸と向き合う覚悟ができてきた。それがなぜだかはうまく説明できない。とりあえずUA Mileage Plusのマイルがたまったから、ということにしておく。
大陸の入口として選んだ場所は上海である。初めての大陸旅行については、「王家衛が『北京の夏』を撮ったら北京に行く」というのが、私の中での暗黙の了解であった。しかしどうやらこの企画はなくなったらしい。それではなぜ上海か。やはり金子光晴の『どくろ杯』[B42]の影響が大きいだろう。春に念願のバトパハを訪れたこともあり、「金子光晴強化年間」などと称して、勢いに乗って決めてしまった。
これからここに書き記すのは、こういう次第の、9日間の旅日記である。
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