TOKYO FILMeX 2005

『結果』Q&A

開催日 2005年11月26日(土)
会場 有楽町朝日ホール
ゲスト(舞台挨拶) 章明(チャン・ミン)(監督)
Qin Haiyan(脚本)
廖忠、徐百卉、黄夏夕(出演者)
ゲスト(Q&A) 章明(監督)
Qin Haiyan(脚本)
司会 林加奈子
北京語-日本語通訳 渋谷裕子


舞台挨拶

司会(日本語):章明監督からまずひと言ご挨拶いただき、みなさんをご紹介いただけますでしょうか。

章明(北京語):今回ここに参加させていただき、ぜひ今日はみなさんがこの映画を観てどいういう感想をもたれたのかお聞きしたいと思います。とても重要なことだと思います。
◆それでは私からご紹介させていただきます。脚本家のQin Haiyanさん。

Qin Haiyan(北京語):今回この映画の脚本を担当させていただいたことは、私にとってとても重要な経験でした。本当に面白い経験をしました。この作品は妊娠についての映画なんですが、みなさんにこの作品を楽しんでいただければと思います。

章明(北京語):男性の主役の廖忠さんです。

廖忠(北京語):ここに来られて本当に嬉しいです。実は私はノンプロです。専門の俳優ではないんですが、この章明監督の映画に参加させていただいて、本当に映画が好きになりました。今日ここでみなさんにお会いできて嬉しいです。この作品の中で私が演じているのは、今の私と全然違うと思います。どうぞ楽しんでください。

章明:この作品には、まず探偵みたいな男性が出てくるんですが、それは別の俳優さんです。後半に出てくるのが彼です。
◆主役の徐百卉さんです。

徐百卉(北京語):今回このフィルメックスに参加させていただき、とても嬉しいです。章明監督は本当にすばらしい監督で、俳優にとってもすばらしい監督です。ぜひみなさんゆっくりとご覧になって、この映画を好きになっていただければと思います。

章明:黄夏夕さんです。

黄夏夕(北京語):みなさん、こんにちは。私は北京電影学院の学生です。私がこの中で演じている役柄は、今の私とは全然違います。ぜひゆっくりご覧になってください。

Q&A

司会:今まさにご覧いただきましたけれども、ものすごい緊迫感というか、ただならぬ空気を、見事な演出で観させていただきました。日本の観客のみなさまのご意見やご質問など、反応をすごく楽しみにしていると言っていただいています。

観客1(日本語):昔のレコードのA面とB面のように、前半と後半で同じような話が、女性一人が同じで、少しずつ違った形で繰り返されるわけなんですが、これは二回撮影したのか、それとも同時進行でA面とB面の話を撮影されたのかを教えてください。

章明:撮影の方法ですが、これはわずか18日間で全部撮り終えたもので、前半と後半で俳優は違っても、同時に進行していく方法で撮りました。
◆最初の、前半と後半に分かれていてA面とB面のようだというご質問なんですが、それは脚本家のQin さんから説明してもらいます。

Qin Haiyan:内容からいっても形式からいっても文学上の構成としては一致するものなんですが、微妙な映画の処理上のスタイルをそこに組み込むために、このような構成にしてあります。妊娠にまつわる話の中で、いろいろな男女のストーリーを組み込んでいくという意図があり、最初の計画では男女一人ずつの話でしたが、男性二人と女性一人という構成にしました。

章明:監督としては、前半と後半で人物は違っても、全篇を貫くのは一人の男と一人の女のストーリーとみています。生まれ変わりというわけではないんですが、前半から続くような形で後半にもっていったというのが監督としての意図です。全く別の人物とは考えていません。最初はお金を貰って探しにくるという話だったのが、後半にいくに従ってだんだんと目的が変化していきます。

観客2(日本語):サミュエル・ベケットの作品の影を見ました。ご存じだろうと思いますが、そういう意識がおありになったのでしょうか。

章明:私が大学に入った頃、ちょうど中国にも外国の演劇がどんどん入ってくるようになり、演劇の本でベケットのことを読んだことはあります。ただベケットの作品の演劇は観ていません。
◆この作品もそうですが、前の二作も、その時々の中国の経済状況をふまえてストーリーを考えていくという映画の撮り方をしています。私は庶民の一人です。私の育ったところは大都市ではない小さな田舎町で、そこから大都市に来ました。この数十年来の中国の劇的な変化は、自分が身にしみて経験してきたことです。そういう状況の中で、人々がどのように変わってきたか、庶民がどういうふうに生きてきたかというのが、私の一番興味があるところです。中国のこの二十年来の変化は、西洋での二百年くらい間の変化が二十年という短い時間の中で起こったようなものです。局部的な変化でもあり、決して正常な変化ではありません。あまりにも急激すぎる変化です。

観客3(日本語):前半部分の中年の男性の主演の方ですが、彼は80年代から90年代頭に香港映画で活躍していた方で、ほとんど主演ではなく助演の形でした。どういった経緯で彼を今回キャスティングしたのか教えてください。

章明:大陸の映画状況は、今香港と非常に密接な関係をもっています。大陸の市場をめざして、香港の俳優たちもチャンスがあれば大陸の作品に出ています。この黄光亮(トミー・ウォン)さんは、最初は出る予定ではなかったんですが、資金を出してくれたところがいろいろと考えて、黄光亮さんに連絡を取って出ることになりました。実は黄光亮さんは、妊娠にまつわる話と聞いてコメディだろうと思い、出てくれることになったんです。
◆黄光亮さんは、香港で周潤發主演の黒社会映画などに出ていた方ですので、私の演出方法に最初は慣れませんでした。アート・ムーヴィーとはどういうものか、そこで自分がどういう役柄を演じることができるのかということをよく把握していませんでしたが、だんだんとわかっていただきました。

観客4(日本語):中国には長く一人っ子政策というものがあって、それが最近ではかなり変わってきたということですけれども、そうした妊娠して出産することをめぐる政策の変化とこの映画との関係についてお伺いしたいのがひとつ。それから関連して、流産した女性が担ぎ込まれる病院に看板がかかっていて、具体的な名前は忘れたんですが、何とかサービスというように翻訳のテロップで紹介されていたと思うんですけれども、あれはどういう場所なのかということを伺いたいです。

章明:脚本のQinさんは1983年の生まれの一人っ子です。じゃあちょっとQinさんに。

Qin Haiyan:中国政府が行っている一人っ子政策と直接の関係はないですが、この主人公の女性の世代は一人っ子の世代です。関係があるとしたらそのあたりでしょうか。

章明:中国政府が行ってきた一人っ子政策は、中国社会に非常に大きな影響を与えたと思います。中国はこれまで儒家の思想で成り立ってきました。儒家の倫理観がずっと中国社会の伝統だったわけですが、それがこの政策によって大きく変わってきました。一人っ子だと、伯父さん、伯母さんとか、親戚というものがいなくなってくるわけですから、今までの社会とは大きく変化します。このような一人っ子政策の時代に生まれた人たちがこれから中国社会の主流となっていけば、大きな影響が出るでしょう。この人たちは、私のような世代の人間とは全然雰囲気が違います。
◆今日舞台挨拶に上がってきた俳優さんたちは全部一人っ子です。

司会:二番目のご質問の、病院の看板については?

章明:これは外国とは異なる社会状況なんですが、中国には計画出産センターというのが病院に併設されており、中絶が公に行われます。外国だと隠されたりしますが、中国では計画出産センターという看板が掲げられて、公に中絶が行われています。

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作成日:2005年12月12日(月)