TOKYO FILMeX 2005
■■■『マジシャンズ』舞台挨拶・Q&A
開催日 ● 2005年11月20日(日) 会場 ● 有楽町朝日ホール ゲスト(舞台挨拶) ● 宋一坤(ソン・イルゴン)(監督)
パク・ヨンジュン(撮影)
キム・ジョンオク(プロデューサー)ゲスト(Q&A) ● 宋一坤(監督)
パク・ヨンジュン(撮影)司会・日本語-英語通訳 ● 市山尚三 韓国語-日本語通訳 ● 根本理恵
舞台挨拶
- ■宋一坤(韓国語):お会いできて嬉しいです。はじめまして(日本語)。
- ■今日一緒に来た私の仲間を紹介します。いちばん右にいるのがプロデューサーのキム・ジョンオクさんです。私の隣にいるのが撮影をしたパク・ヨンジュン撮影監督です。
- ■私たちが一生懸命作った映画ですので、みなさんに気に入って楽しんでいただければ嬉しいと思います。私は今日のこの場を一年間待ち望んでいました。今日はみなさんにたくさんの感動を持ち帰っていただければと思います。
- ■実はこの映画は、世界で初めて今日この場でみなさんに公開することになります。というのは、DVという小さなカメラで撮ったものをフィルムにうつしとる作業をしており、今日日本の観客のみなさんにご覧いただくのが初めてとなります。非常に期待しています。
- ■この映画はひと言で言えば、とても哀しいコメディです。言葉の違いはありますが、笑えるシーンが盛りだくさんですので、ここが笑いどころだと思ったら、思いっきり笑ってください。特に、お坊さんが出てくるシーンがあるんですが、そこはたくさん笑ってほしいと思います。
- ■この映画はカットがありません。つまりワンシングルテイクで撮った映画です。そのような撮り方をしたのは、95分という限られた時間の中で、観ている人たちも、過去と現在と未来を主人公と一緒に楽しんでほしいと思ったからです。どうか楽しんでご覧ください。
Q&A
- ■観客1(日本語):釜山でショート・ヴァージョンを観たんですが、前後が切れているだけで、明らかに、今日のヴァージョンがはじめから意図して作ったものだと思うんですけれども、ワンテイクで撮るというやり方をした理由を教えていただきたいというのがひとつ。それから、撮影監督さんがいらっしゃるので、たしか前に金基徳が“実際状況”かなんかでやはり1時間撮ろうとしてそれはやはり1時間で撮れなかったということですが、これは本当にわぁーと撮れているんですけれども、大変だったんじゃないかと思うんですよ。そのあたり何か技術的な苦労などがあればお話を伺いたいです。
- ◆宋一坤(韓国語):この映画は、全州映画祭のオープニング作品として依頼を受けて作った作品で、三人が参加しています。日本の塚本晋也監督とタイのアピチャポン・ウィーラセタクン監督と、それぞれ30分ずつの短篇をディジタルで撮ってそれぞれ上映するという、『三人三色』という企画です。だから最初から30分という制限はあったんですね。限られた時間の中でワンテイクで撮りたいと思った理由は、この物語を現実のものとしてみなさんにお見せしたいと思ったからです。
- ◆一番前の方、あるいは前方に座られた方は、観るのがちょっと大変だったんじゃないかと思います。画面がけっこう揺れたりしていましたので、映画酔いしなかったでしょうか。この映画はひとつのショットで、つまりカットせずに最初から最後まで一発で撮ったわけですが、途中でフィルムが切り替わるときに、ちょっとブレがあったと思います。というのは、フィルムは大きな巻がないので、現像した段階で5巻に分けなければならず、巻を換えるときにどうしてもブレが出てしまいます。技術的なことで仕方のないことですので、どうかご理解ください。
- ◆パク・ヨンジュン(韓国語):実は、私はあまり深く考えずに撮ったんですね。この撮影で一番大変だったのは、木の間をすりぬけて撮るということでした。この映画は、おそらく50回から100回くらい観ていると思うんですが、観るたびに息の詰まるような思いをしています。宋一坤監督とは3本の映画でご一緒しています。最初は『フラワー・アイランド』という作品だったんですが、これは山とか谷とかいったところでたくさん撮りましたので、たいへん苦労しました。去年は“襟”というタイトルの映画を撮ったんですが、これも済州島(チェチュド)で台風の中で撮らなければならないという状況で、とても苦労しました。そして今回は、1時間半の間ずっとカメラを持って飛び回らなければならない状況だったので、技術的にも大変だったんですね。ただ私はあまり深く考えないたちなせいか、それほど臆せずにいろいろなことを気にせずに撮ったので、かえってよかったのではないかと思っています。その点でも個人的に非常に満足しています。
- ■観客2(日本語):すごく面白い映画を観させていただきました。ワンカットでできるとは思えないんですけれども、本当にうまくできている映画だと思います。特に役者さんがすばらしい演技をしていて、どうやって撮ったのか、どうやってリハーサルをしたのかということが非常に疑問で、それをお聞きしたいです。韓国の映画というのはどんどん延びて予算が多いわけですが、これは一日で撮っているので予算はうまくいったんだと思うんですが、その前のリハーサルは相当やったと思います。どういうふうにされたのでしょうか。
- ◆宋一坤:本当にこれは容易ではない撮影でした。さきほど撮影監督が、あまり深く考えずに撮ったと言っていましたけれども、考え出したらこれは不可能なことで、撮影のスタッフも俳優も、どういう映画ができるか全くわからない状態で撮影に臨んでいました。
- ◆この映画を35ミリのカメラで撮影するのは不可能なことです。というのは、35ミリのカメラは非常に重いので、人の体力では1時間半もの間それを支えきれないからです。今回はヴィデオ・カメラを使ってステディカムという方式で撮りました。体にカメラを取り付けているわけですが、それだけでも腰が痛くなってしまって、撮影が終わったあと撮影監督はトイレにも行けないほど腰を痛めてしまいました。ですから二人で交代しながらカメラをお願いしたわけなんです。寒いときに撮りましたので、リハーサルの途中にもう鼻水が出てしまうんですが、鼻水が顎のほうまでたれてしまっていても拭いてあげることができなかったんです。というのは、ちょっとでも拭いたりしてしまうとカメラが動いていまうからです。
- ◆今回の俳優は、ほとんど演劇出身の方を集めました。演劇界では長く経験を積んだ立派な俳優たちです。演劇というのはご存じのとおり、一回も休まずに演技をするわけです。ですから演劇の経験のない俳優だったらちょっと無理だったかもしれないと思います。リハーサルは、シーンごとに部分的、集中的にやるようにしました。体力にも限界がありますので、通しでずっとやるのは無理だったんですね。部分的にリハーサルをして、一度リハーサルが済むと3時間から4時間くらい休んでまた次のリハーサルという形をとりました。
- ◆今回は照明の数も多かったんです。一般的な商業映画に使われる照明の数の二倍から三倍くらいあったのではないかと思います。セットもかなり広いセットで、演劇だったらこれほど広いセットはとれないのではないかというぐらい広いセットを作りました。照明のコントロールも大変だったんですけれども、サウンドにもこだわって、できるだけ同時録音をしたいと思いました。アフレコといってあとから俳優の口に合わせて録音するのは、今回に限っては無理だと思っていました。なぜなら、臨場感や現場での雰囲気を大切にしたいと思ったからです。そこで韓国映画界の名だたる同時録音の権威を30人呼び、みなさんに協力していただいて撮りました。クレーンもたくさん使って撮ったわけですが、片方のシーンを撮っているときにはクレーンを撮る人たちは隠れていて、ひとつの場面を撮り終えて次に移るときにその人たちが出てきて撮るというようなこともしました。私はまだまだ映画の経験は少ないほうですが、極度の緊張感の中で映画の撮影が続けられました。でもこの映画を撮ることができた耐え得る力というのは、やはり俳優たちの集中力からいただいた気がします。本当に俳優が熱演をしてくれて、その意味ではこの映画は俳優の映画といえるかと思います。
- ■観客3(日本語):95分でワンカットという映画を撮られたんですけれども、またこのような手法で映画を撮るアイデアがあるでしょうか。
- ◆宋一坤:今回参加してくれたスタッフにもう一回撮ろうと言ったら、おそらくみんな逃げるんじゃないかと思います。ですから、別のスタッフをなんとか口説いて集められたら撮れるかもしれないです。本当に肉体的に大変な作業なんですね。とはいってもやはりいい素材、いい題材があればまたぜひ撮りたいと思っています。そのときは、たとえば飛行機に乗ったり汽車に乗ったり、今回の映画よりもアップデートされた映画にしたいと思います。
- ◆フィルメックスに参加させていただいたのは今回で三回めなんですが、この映画祭の関係者のみなさまに感謝したいと思います。韓国の人はけっこうお酒を飲んで騒いだりするんですが、そういう文化の中から今回の映画が生まれたと私は思っています。日本にもお酒を飲んで騒ぐような文化があるんじゃないかと思いますので、日本のみなさまに大いに共感してほしいと思いますし、この映画をもし楽しんでいただけたとしたら本当に嬉しいです。
- ◆司会:みなさんたぶん楽しんでいただけたんじゃないかと思います<拍手>。来年日本で劇場公開の予定もあると思いますので、今日ご覧になった方はまた観ていただきたいと思いますし、ぜひ知り合いの方々にお薦めいただければと思います。
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