第18回東京国際映画祭

『靴に恋する人魚』ティーチ・イン

開催日 2005年10月29日(土)
会場 シアターコクーン
ゲスト 李芸嬋(監督)
司会 襟川クロ
北京語-日本語通訳 水野衛子
日本語-英語通訳 小林のり子


司会(日本語):まず李芸嬋さんから、大きな劇場で上映された感想をお聞きしましょうか。

李芸嬋(北京語):大きな劇場ですね。私はこの映画の監督の李芸嬋です。

司会:元女優さんですか。

李芸嬋:いいえ。女優として演技をしたことはありません。私はいろいろなスタッフの仕事をしてきました。

観客1(日本語):今年はちょうどアンデルセンの生誕二百周年記念なんですね。それで話の内容をみると、アンデルセンの童話のモチーフがたくさん散りばめてあることに気がついたんです。監督としてはそのあたりにインスパイアされてこの話を撮ったのでしょうか。

李芸嬋:この脚本は2年前にできていましたので、今年がそういう年で、童話関係の映画がいろいろ出てくるということは全く考えていませんでした。でもすごくよかったと思います。童話をモチーフにして映画を撮れば、きっとみなさんに気に入っていただけると思うからです。

観客2(日本語):撮影された場所が具体的にどこになのか教えていただきたいのですが。エンディングで新竹の名前が出ていたんですが、新竹のどのへんなのか教えてください。

李芸嬋:新竹の動物園と、そのほかの場所は全部台北市内で撮りました。新竹の動物園はすごく小さな動物園で、十数種類しか動物がいないんです。非常に雰囲気がよく、私自身そこがとても好きなので、その動物園で撮りました。新竹のどこということにどうしてそんなにこだわるのか、私のほうが知りたいです。

観客2:台湾が好きで、年間何度も訪れています。映画の舞台にも非常に興味があり、ぜひ行ってみたいと思ったのでお聞きしました。もうひとつだけ、あのポストのある場所はどのへんなのでしょうか。

李芸嬋:ポストは、様子がたいへんかわいらしいので郵便局から借りて置きました。あまり台北らしくないということで、同じような質問は台湾の観客からも聞かれました。もし中国語がおできになるのでしたら、住所を教えていただければ、このシーンはここで撮ったというのを中国語で書いて送ります。

観客3(日本語):映画の美術、すなわちインテリアや、靴はもちろん洋服、建物の色などにすごくこだわりが感じられたんですが、何に一番こだわったのか教えてください。

李芸嬋:美術も衣装も全部同じ人で、大変親しい、8年の付き合いになる王逸飛という人です。この映画の美術のコンセプトは、まるで童話の本そのものみたいということです。私たちは長く一緒に仕事をしていて、台湾映画というのは、暗くてあまりきれいではない映画が多いので、「自分たちで映画を撮るときは、ピンク色の映画を作ろうね」とずっと言っていたんです。
◆予算が本当に限られていましたし、人手も非常に少なかったので、美術には非常に苦労しました。ところがすごく意外なことに、今年の金馬奨では、すごく予算の大きな映画と一緒に、私たちも美術賞にノミネートされているんです。

観客4(日本語):香港の劉徳華アンディ・ラウさんが中心になって始めたプロジェクトのひとつだということで、とても興味をもって観にきました。さきほどバジェットの限界があったというお話があったんですが、劉徳華さんがふんだんに予算を提供してくれたわけではないのでしょうか。どんなふうに彼がこの作品に対して協力してくれたかということもお伺いしたいです。

李芸嬋:これは新人監督を養成するために、若い監督にお金を出す、ファーストカットというプロジェクトです。劉徳華さんの会社以外にスターTVもお金を出しています。私たちのいただいたお金は想像できないほど少ないんですが、デビュー作ですから、たくさんもらってすごく変な映画を作ってしまったら申し訳ないです。今回は一応成功したので、次はたくさんもらいたいです。
◆金馬奨の視覚効果部門にもノミネートされています。アニメーション的な動きとかのところです。『セブンソード』と一緒にノミネートされています。

観客5(日本語):キャスティングがとてもいいと思ったんですけれども、キャスティングに関して工夫した点や、どういう理由で俳優をキャスティングしたかを教えていただきたいと思います。

李芸嬋:この映画の制作が決まり、すぐに私たちみんなが一致したのは、これはもう徐若瑄ビビアン・スーにやってもらうしかないということでした。彼女はもうすごく若いというわけではありませんので、結婚しておかあさんになるという役にも合うと思いました。そして彼女の顔は、人魚のような、主人公の朵朵らしいかわいらしい顔をしているので、ぴったりだと思います。それに彼女は、ずっと彼女にふさわしい役をもらっていなかったので、脚本を読んですごく気に入ってくれて、会って5分もたたないうちに「ぜひやらせてください」と言ってくれました。
◆そして徐若瑄から周群達Duncanを紹介されました。私たちの映画の制作会社であるThree Dotsは、周群達の出ている『僕の恋、彼の秘密』という映画も作っています。周群達はどうかということですぐ彼に会い、彼もすぐに決まりました。

観客6(日本語):私は劉徳華の大ファンなんですけれども、ナレーションを彼がやっていることを知らなかったので、すごくびっくりして、またすごく幸せな時間を過ごさせていただきました。質問なんですけれども、徐若瑄の働いている出版社のスタッフは、何年か経っているのに誰も歳をとらないし、猫も子猫のままなんですが、やはりあれは童話ということで意識的になさったんだと思うんですけれども、そうですよね?

李芸嬋:猫がそのままなのは予算の関係です。予算の関係で、同じ場所のシーンは全部一度に撮らなければならないので、いろんな猫を探している時間もありませんでした。スタッフをはじめ人間たちがほとんど変わらないのは、意識してそうしました。出版社のシーンは2日間で撮ったんですが、わざと何も変わらないようにして撮りました。変わるのはヒロインがちょっとずつ変化していくところです。

司会:すごい数の靴ですけれど、全部タイアップですか。

李芸嬋:靴のブランドにたくさん提供してもらってお金を出してもらおうと思ったんですけれども、どこからも自分のところの靴だけにしてくれと言われました。そうすると全部同じような靴になってしまうので、そうするわけにはいきませんでした。実際に使った靴は、友だちに借りてきたものもありますし、何も装飾のない靴を買ってきて、それにスタッフが花をつけたり装飾をつけたりしたものもあります。スタッフは毎日現場で靴づくりをしていました。

観客7(日本語):僕は片づけられないので、写真が貼ってある靴の整理の仕方はいいアイデアだと思って観ていました。今後も商業劇映画を作っていきたいと監督は考えていらっしゃると思いますが、これからどういった映画を撮りたいかとか、もし次回作を準備しているようだったらそれについて教えてください。

李芸嬋:二つ計画があって、ひとつはもっともっとお金がとれるようになってから撮ろうと思っているんですが、DNAが愛を決定する、DNAが私の愛を変えるというようなお話を撮りたいと思っています。それはこういうお話です。すごく潔癖症の女の子がいて、とにかく男の人の臭いや汚さが我慢できない。そこにすごい薬が発明されて、それを飲むとDNAが変わってしまい、臭いもしないし汚いものが目に入ってもそういうふうに見えないようになる。そういう薬を飲んだら無精な男と一緒になれるのか。果たしてそのようにして一緒になって幸せが得られるのか。そういうお話です。女の子たちは程度の差こそあれみんないろいろな潔癖症をもっていて、いつも夫やボーイフレンドが我慢できないと言っていますので。

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作成日:2005年11月10日(木)