第18回東京国際映画祭

『AV』ティーチ・イン

開催日 2005年10月27日(木)
会場 VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ2
ゲスト 彭浩翔(監督)、深沢寛(脚本)
司会
広東語-日本語通訳 山本ゆみ?
日本語-英語通訳 松下由美


司会(日本語):さっそくですが、彭浩翔監督、深沢さん、ひと言ずつお願いします。

彭浩翔(広東語):みなさん、こんにちは。私の『AV』という作品を観ていただき、ありがとうございました。東京国際映画祭は二回目の参加になります。この『AV』では、自分の夢、つまり日本のAV女優と協力して作品を作るという夢をかなえることができて、とても嬉しく思っています。

深沢(日本語):こんにちは。深沢寛と申します。初めての舞台挨拶、とても嬉しいです。映画祭には毎年来ているんですけれども、舞台挨拶は今回が初めてです。どうもありがとうございました。

観客1(日本語):こんにちは。私はアダルトヴィデオ・メーカーの宣伝をやっているんですけれども、天宮さんを選ばれた理由はどういったものだったのでしょうか。うちの専属の女の子も今売り出し中で、うちの女の子だったらよかったなぁなんて思ったんですが。

彭浩翔:最初は、AVショップへ情報収集に行って、何人かの女優さんの作品を選んできて、会社の中で検討してどの人にするかを決めるつもりだったんです。ところが、行ってみたら天宮さんに惹きつけられてしまって、「彼女じゃないと駄目だ、彼女じゃないと撮らない」と会社の中で宣言しました。それによって、天宮さんに協力のOKをいただいたり、彼女とのスケジュールの調整に、会社は相当苦労したと思います。
◆ただ、なぜそのとき天宮さんにそれほど惹きつけられて、彼女じゃないと駄目だと思ったのかは、自分ではわからなかったんです。その後、撮影などの仕事が全部終了してから、音楽を担当してくれた、中学時代の同級生のアレン・ウォンという人に、「なぜ君が天宮さんじゃないと駄目だと言ったのかわかったよ。憶えてる? 中学のときに片思いしていた彼女にそっくりじゃない」と言われました。私はもう彼女のことを忘れていたので、急いで家に帰って写真をひっくり返して探したら、本当にそっくりだったんです。人の好みは変わらないと思います。

観客2(英語):夢が実現したことをお祝い申し上げます。香港映画に日本の女優さんに来てもらって撮ったということで、文化的な問題や、今までとは違った新しい挑戦があったのでしょうか。それから、本当に笑える楽しい映画だったんですが、何か楽しいエピソードがあったら聞かせてください。

彭浩翔:一番の問題は、言葉が通じないということでした。私は最初、けっこう簡単に考えていたんです。今私の隣に座っている、脚本を一緒に担当してくれた深沢さんは、私の小学校のときの同級生で、数々の映画にも関わっています。日本人の血も受けついでいますので、日本語の部分はすべて彼に任せていました。ところが現場で、彼は、「天宮さんの日本語は駄目だ、おかしい」って言うんですね。天宮さんは、そんなことないと言います。私は日本語がわからないので、どっちが正しいのかわからなくなりました。
深沢:私の日本語がちょっと変かもしれないですね。
彭浩翔:私もそう思います。
◆今回起用したキャストも、天宮さんと最初から親しいわけではありません。特に、抱きしめたり、体が触れ合うシーンがたくさんありますので、けっこうかたくなってしまったんですね。私は監督として責任を感じて、抱擁したりする見本をたくさん示したので、けっこう忙しくて大変でした。

観客3(日本語):すてきな作品をありがとうございます。二点お聞きしたいことがあります。ひとつは、天宮さんのマネージャーとして暉峻さんという名前の方がいらっしゃいました。このアジアの風のことで、今回暉峻さんお会いになられたと思いますが、何か言葉を交わされたのでしょうか。もうひとつは、VCD屋のおやじさんがとても気になったんですけれども、英語もとても流暢にお話しになっていますし、あとでラップも歌われているかと思うんですが、どういう方なのか教えてください。

彭浩翔:まずひとつめのご質問からお答えします。私は映画を作るときに、自分の友人の実名を借りて使うことがよくあります。今回の映画では、一人の役どころとして日本人が出てくるということで、すぐに暉峻さんの名前が結びつきました。暉峻さんとは、2001年、私の最初の作品を作ったときに香港で知り合って、それ以来ずっと親しくさせていただいています。暉峻さんの名前を使ったことで、香港では、暉峻さんとあまりうまくいっていない、もしくは暉峻さんのことが嫌いだからわざわざ皮肉って名前を使っていると報道されたこともありました。しかしそうではなく、私は暉峻さんのことをとても親しい友人だと思っています。暉峻さんも、私がこの映画の中で名前を使うということをご存じでしたし、反対もなさいませんでした。
◆映画の中で英語を喋っていた俳優は詹瑞文(チム・ソイマン)といい、第一作目の『ユー・シュート、アイ・シュート』から彼に出演してもらっています。今までずっと私の作品に出てもらっていて、彼が出ているのでヒットしていると思っています。運を呼んできてくれるラッキー・パーソンだと思っていますので、脚本を書くときにはいつも必ず彼の役どころを考えて、脚本の中に入れています。彼が出演してくれなくて作品が売れなかったら困るなぁというのが、私自身のどこかにあるんだと思います。

観客4(日本語):たいへん楽しい映画をありがとうございました。特に、日本のAV嬢を呼んできてセックスをしたいがために、学生たちがそういうことを思いつくというアイデアが非常によかったと思います。二点ご質問させていただきたいんですが、監督が映画を撮る場合、その映画を成功させるために一番大事なことは、映画のシナリオか、キャスティングか、あるいは監督の総合的な演出力か、どういうところに一番力を入れていらっしゃいますか。それから、アクション・シーンを撮らなければハリウッドでは通用しないという台詞がありましたが、監督自身はやはりハリウッドへ進出して、ハリウッドで映画を撮りたいという念願があるのでしょうか。それから、香港の映画監督は全部、ハリウッドをめざすような願望を持っておられるのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。

彭浩翔:まず最初のご質問ですが、私が映画を作るときに一番重視しているのは、裏方で仕事をしてくれるスタッフです。映画が成功するかどうかは、80%くらい彼らの仕事にかかっていると思います。私は新しい環境にすぐになじめるタイプではありません。映画を撮るということは、感覚的に、ほかの人と協力して強盗に入ることにたとえられると思います。強盗に入るとすれば、必ず気心の知れた人と組みますよね。安心して任せられる、気心の知れた人と仕事をすることを一番大事にしていますので、私のスタッフはほとんど固定していて、いつも決まった人を使って仕事をしています。

観客4:キャスティングは関係ないですか。

彭浩翔:キャスティングも重要といえば重要ですが、キャスティングは毎回変えることができるし、実際、毎回変わります。必ずしも自分がよく知っている人を使う必要はないんです。新人を使っても映画は撮れます。

彭浩翔:ふたつめのご質問ですけれども、呉宇森監督の成功によって、香港の若い監督や俳優は、いつかはハリウッドに進出したいと思っていると思います。「アクションを入れないとハリウッドに進出できない」という台詞をなぜ入れたかというと、我々の映画は、いつも安いコストで短期間で撮っています。ですからスタッフも、「安いコストでこんなに忙しく撮って大変だなぁ」という恨み言をよく言います。その中で誰かが「そのうちハリウッドに進出したらそういうこともなくなるよ。きっと十分な時間と予算をかけて映画を撮れるようになるよ」という話をしたときに、私が「でも、ハリウッドに進出するならアクションを撮らないと」と言ったんですね。それで前の日の夜、その自分の言葉がきっかけになって、アクションの場面を入れようということになり、急に加えた場面なんです。

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作成日:2005年10月30日(日)