第18回東京国際映画祭

『Aサイド、Bサイド、シーサイド』ティーチ・イン

開催日 2005年10月26日(水)
会場 VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ2
ゲスト 陳榮照(監督)
司会
広東語-日本語通訳 山本ゆみ?
日本語-英語通訳 富田香里?


司会(日本語):まず監督にひと言ごあいさつをお願いしたいと思います。

陳榮照(広東語):みなさん、こんにちは。今日は私の作品をご覧いただき、ありがとうございました。この作品は、香港ではまだ正式に公開されていません。一部ですが、さきほど私もこの劇場でみなさんと一緒に観ることができました。一緒に観たあとでこういう場をもつことができてとても嬉しく思います。

観客1(日本語):香港では公開前ということなので、これからまた違う完全版を作られるのかもしれませんが、それはおくとして、比較的短い作品だと思いますが、監督としてはたとえばあと20分付け加えるとしたらどんなことを付け加えたいですか。あるいは、これで十分描ききったと思われているのでしょうか。もう一点、交通や船を逆回しに写しているシーンが二箇所くらいあったと思うんですが、これはどういう意味がこめられているのでしょうか。

陳榮照:まず一つ目の、90分で全部描ききったかというご質問からお答えします。実は、脚本の中には北京でのお話も含まれていましたが、その部分は映画の中にはありません。機会があったら、続編という形で撮れればと思っています。
◆二つ目の、逆行していく場面についてのご質問ですが、よくそこまで細かくご覧になりましたね。そういうところまでご覧になっていらっしゃらない方がけっこういるんですが。私がそういう手法を使ったのは、ものごとが自分から離れていく感じを表したかったからです。

観客2(日本語):爽やかな映画をありがとうございました。何点かお聞きしたい点があります。ベイビーがお墓参りをしているシーンや、ハニーが子猫を探しているシーンで、映像が木の陰から撮られていたんですが、その意図は何でしょうか。それから私の勘違いかもしれないですが、陳果フルーツ・チャン監督の映画と同じようなイメージを感じました。もし何か影響がありましたらお聞かせください。また、一番最後のBサイドの場面にVCDショップの女の子が出てくるんですが、彼女はもしかして『リトル・チュン』や『ドリアンドリアン』のあの女の子なんでしょうか。

陳榮照:木の陰についてですが、ベイビーとハニーは、もともとは知らない二人同士なんですが、長洲島のどこかですれ違い、どこかで接触点がある。彼女たちの人生の中のどこかで、自分の知らない間につながっていたという時間の感覚を表したかったんです。
◆三つ目のご質問に飛ぶんですが、VCDのお店で出てきた女の子は、おっしゃるとおり『リトル・チュン』、『ドリアンドリアン』のあの女の子です。彼女はすごくいい子で好きなので、特別に起用しました。観客の方にも、「もうこんなに大きくなっているよ」ということをお知らせしたかったんです。
◆二つ目の、陳果監督とどこか似ているんじゃないかというご質問に戻ります。たしかに陳果監督は私が大きな影響を受けた監督の一人です。彼の手法とよく似た手法を、この作品の中でもご覧になったと思います。特に、プロの役者でない人を起用したり、新人を使ったりする手法が似ているのではないかと思います。

観客3(日本語):考えすぎかもしれないんですが、少年が自転車でぐるぐる回るところなど、ところどころに円のイメージがありました。日本語では円と縁は同じ発音なので、もしかしたらそういうこととつながりがあるかもしれないと思ったんですが、どうですか。

陳榮照:正直なところ、自分が撮影しているときはそんなことは考えていませんでした。自転車のシーンは、少年が自転車に乗って同じところをぐるぐるぐるぐる回っているのは面白いんじゃないかと思って撮りました。私は円というのはあまり好きな形ではないですが、だからこそ映画の中で撮ってしまったのかもしれません。

観客4(日本語):外国人の神父さんが普通話をしゃべったら彼女たちに通じなくて、英語をしゃべったら通じたというシーンがありました。私自身は、香港へ行くと、若い人を中心に普通話が年々通じるようになっている気がしています。香港が返還されて10年くらい経ちますが、若い高校生たちに普通話が通じないというのは、何か「返還された香港だけど」みたいな、対中国的、対大陸的に表現したいことがあったのでしょうか。

陳榮照:あの中で描いているのは私自身なんです。私は北京語があまりよくしゃべれないので、映画の中に自分の感覚を折り込んでみました。実際は、香港の若い人たちの北京語の能力はずいぶん高くなっています。間違いなく私より上手だと思います。

観客5(日本語):映画の舞台の長洲島のとてもきれいな海が印象に残ったんですが、この島を舞台に選んだ理由、この島の魅力についてお聞かせいただけないでしょうか。

陳榮照:長洲島のことについて話し出すと長くなりますがいいですか。まず一点目に、香港に住んでいる我々にとって、長洲島はとても面白い場所、好きな場所です。長洲島のイメージは、ウインドサーフィンやヨットと結びついています。オリンピックで、香港の李麗珊という人がヨットで優勝しました。だから、「ヨット=長洲島=…」というように連想がつながって、かなり思い入れのある地域です。
◆二点目に、私も若い頃は、映画に出てきた高校を卒業したばかりの女の子たちと同じように、長洲島へ行っては一泊して、いろいろ楽しいことをしてきました。とても楽しい想い出があるのと同時に、ロマンティックな経験もしたことがあるので、長洲島を選びました。

観客6(日本語):私はTTという女の子がとても気になり、私の高校時代にもああいうタイプの女の子がいたのを思い出しました。監督自身は、TTのような女の子にシンパシーを感じたり思い入れがあったりするんでしょうか。

陳榮照:TTの役柄は、好きな役柄のうちのひとつです。最近は、TTのような女の子が増えているのではないかと感じています。誰かにキスしてほしいと思いながら最終的にはしてもらえなかった、そういう感覚に何か感じるところがあったので、この場面を撮りました。
◆ここでみなさんにお伝えしたいもうひとつの情報は、このTTはVCDのお店に出てきた女の子の実のお姉さんです。

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作成日:2005年11月10日(木)