TOKYO FILMeX 2003

『オール・トゥモローズ・パーティーズ』Q&A

開催日 2003年11月24日(月)
場所 有楽町朝日ホール
ゲスト 余力爲(監督)
司会 市山尚三
英語-日本語通訳


余力爲(英語):私がこのたび日本に来たのは、まず、観に来てくださったお客様にお礼を申し上げたかったからです。また、この映画でご協力いただきました音楽の半野さん、日本語字幕をつけていただきました小坂さんにお礼を言いたかったからです。

観客1(日本語):プレスを見るとこの映画は近未来の出来事だということなんですが、現実的というか、銃とか服装とか音楽とか全般的な空気が一時代前のもののように感じたんですよね。そのあたりのギャップがあるとしたら、上映などの問題も含めて意図的なものがあるのでしょうか。
余力爲:舞台設定は近未来ではありますが、中国のある種の懐古的な性格を出したくて、あのような服装と音楽で表現しました。映画の中に出てくる出来事は、中国だけではなくアジア全般で、現在実際に起きていることが多々あります。例えば、カルト的な新興宗教の出現や、テロリストの活動の活発化です。
◆ハイテク的な未来を描くのではなく、テクノロジーが消え去っているかのような状態の中での近未来を表現したかったのです。私自身、自分の国のこの50年間を振り返ってみて、何か発展したかというとあまり発展しなかったのではないかと思うところがあいます。したがって、21世紀の半ばという設定ではありますが、50年後に果たして発展しているかどうかはさだかではないので、今回の映画でもそのように表現してみました。

観客2(日本語):質問は二点あるんですけれども、ひとつめは監督さんにお聞きしたいと思います。今回FILMeXのコンペティション作品に選ばれたということをお聞きになったときに、まずどう感じたのかということをお聞きしたいと思います。二点めは、もし差し支えなければなければ、市山尚三さんにお伺いしたいんですけれども、なぜこちらの作品をコンペ作品として選びたいと思われたのか、ぜひお聞きしたいと思います。
余力爲:もちろん嬉しかったです。私が監督した二本目の長編映画ですので、自分にとっても思い入れがあるし、このように日本で上映される機会が得られることを非常に嬉しく思いました。
市山尚三(司会):理由は話すと長くなるんですが、基本的にはすばらしい映画をやりたいというのがあり、これはカンヌ映画祭で観てすばらしいと思ったのがひとつの理由です。正直申し上げて、決してすぐにわかりやすい映画ではないと思うし、僕自身もわかっていないところが多々あるとは思うんですが、ストーリーを理解するといったことを超えても、映像のすごさと言いますか、描いているもののすごさがこちらに迫ってくるという感覚を、最初にカンヌ映画祭で観たときに感じました。FILMeXのひとつの主旨は、才能のある若手監督をサポートしていきたいということです。まさに余力爲監督は才能があると思いますので、そういう意味も含めて、今回コンペティションに選びました。

観客3(日本語):50年くらいあとの世界を描いていると思うんですが、中に出てくるのが中国と韓国らしい国です。この世界地図の中で、欧米列強あるいは日本はどういった位置づけをされているとお考えでしょうか。
余力爲:映画の中では、基本的にもはや国というのは存在しません。映画の中ではポートと言っているんですが、各勢力がポートを形成して、それらが勢力争いをしているというような状況です。
◆最初のコンセプトとしては、中国北部地域において、中国、韓国、モンゴルの各民族が勢力をもっているという状況を設定しました。中国北部地域に限定した舞台設定である以上、そこに日本を加えると話が非常に複雑になってしまうので、意図的に外しました。

観客4(日本語):ひとつわからなかったことがあるんですが、最初のほうで子供が何かの検査を受けていて、身長が足りなかったみたいで、検査長という偉い人の許可を得たにもかかわらず却下されてしまったシーンがあったんですが、あれは何の検査だったのでしょうか。
余力爲:息子に楽園のポートで快適な生活を送らせるために、母親が愛情をもって子供を楽園ポート行きの検査に送りました。楽園ポートに行けるのは4、5歳の子供なんですが、この息子はそれよりも小さいので、ヒールを高くして4、5歳に見せようとしたのです。

観客5(日本語):タイトルについてお伺いしたいのですが、全くお話は違うんですが、同じタイトルの小説があったと思うんですけれども、その作品の影響はあったんでしょうか。また、なかったとしても、こういう静かな映画につけるタイトルとしてすごく反語的だと思うんですけれども、どういう意味でつけられたのかお伺いしたいのですが。
余力爲:たしか米国の作家が、近未来を舞台にした同じタイトルの本を書いたと記憶していますが、作者の名前は憶えていません。この“All Tomorrow's Parties”というタイトルは、Velvet Undergroundの曲名からもらいました。美しい音楽でとても気に入っています。ただ、Velvet Undergroundのファンの方は、どのように解釈するかわかりません。もしかしたら、そんなことを歌っているわけではないと怒られてしまうかもしれません。
◆ほかには、私がとても好きなJoy Divisionの音楽も劇中に流れます。二人の兄弟が踊っていて、まわりに爆発が起きているときに流れる曲です。私は小さい頃からパンク・ミュージックが非常に好きなので、その影響があるかもしれません。


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作成日:2003年12月3日(水)