TOKYO FILMeX 2002

『小雨の歌』Q&A

開催日 2002年12月3日(火)
場所 有楽町朝日ホール
ゲスト 連錦華(監督)
司会 林加奈子
北京語-日本語通訳 小坂史子


■司会(日本語):監督さんに一言いただけますでしょうか。
◆連錦華(北京語):皆さん、こんにちは。連錦華です。この映画を観に来てくださってありがとうございます。
◆司会:これはワールド・プレミアという形で今日世界で初めて皆さまにご覧いただきました。私も完成版というのは初めてプリントで拝見して、もう最後のヴィデオの怖さにちょっと背中がゾクゾクしているところなんですけれども。

■観客1(日本語):この映画の登場人物の、私、犬が好きなんで犬のことなんですけど、最初の1カットは通りすがりの場面かなと思っていたら、そのあとに15〜18カットくらい犬が出てくるんですよね。しかも人間に無関心な犬なんですが、それは何か意図的なお考えがあったんでしょうか。
◆連錦華:犬が大好きですので、犬に出てもらっています。すべての犬が好きです。この作品に出てくる犬みたいな境遇の犬が新聞で報道されたりしますが、拾ってきて飼ってあげたりとかいうのはとてもおもしろいことだと思っています。
◆司会:私は個人的には、あの犬と彼女の境遇との対比、ちょっと対照的なところでおもしろいなと思ったんですけれども。
◆連錦華:たしかにヒロインと犬は、境遇的に似ているところがあると思います。

■観客2(北京語):連錦華監督は、台湾の監督の中では少数派ですが、北京の映画学院で勉強された方だと伺っています。台湾を出ないで作品を撮っている方との違いを感じることはありますか。
◆連錦華:映画監督としては、北京で勉強したことによって、他の台湾で映画を撮っている監督と大きな差があるとは思いません。映画のテーマとしては、共同監督をした1作目も今回も、いわゆる両岸問題、すなわち中国と台湾の両方に関わる問題をテーマとして扱っているというところはちょっと違うかもしれません。

■観客3(日本語):監督がこの作品を撮ったきっかけとか、きっかけを作った台湾の現状について説明してください。
◆連錦華:僕が台湾で知り合った友人に、中国からお嫁に来た女の子がいます。もちろん部分的にはこの映画のヒロインと違うところがありますが、あまり学歴の高い女性ではなかったところや、田舎から出てきたところなど、いろいろと彼女から得たインスピレーションがあってこの作品を撮りました。例えば、このヒロインとおじいさんの関係は、台湾に住んでいたおじいさんと中国大陸に住んでいたお孫さんです。他の国であれば、単純におじいさんとお孫さんという形で住むことができます。しかし台湾では、こういった中国と台湾にまたがった家族の場合、台湾に住むためには法律上の年齢制限があります。僕が最初にこのことを知ったときには、おじいさんが70歳以上で孫が16歳以下でしたが、その後14歳に引き下げられ、今では12歳まで引き下げられています。だから、二人はおじいさんと孫ではありますが、台湾に住む権利を満たしていなかったということになります。政府が孫の年齢制限を引き下げていった理由は、おそらく嘘の報告で手続きをして定住する人が増えたせいだと思います。そこでこの映画の中のように、偽装結婚の形で台湾に渡ってくることになります。

■観客3:大陸と台湾を両方扱った作品ですが、大陸と台湾の関係は監督にとってどのように捉えられているかを教えていただきたいと思います。
◆連錦華:今回この作品の中に出てきた登場人物のような人は実際にたくさんいるわけで、それは政治の少なからぬ影響を受けていて、しかもよくわからない曖昧な形の制限ではないかと思います。僕は、家族や親族といったものが、こういう形の制限を受けてはいけないという気持ちを強く持っているので、これからもこうしたことをテーマに作品を作っていくつもりでいます。

■観客4(日本語):主演の燕子に陳湘琪を起用した理由についてお伺いします。私がこれまで日本で観たかぎりでは、例えば楊徳昌監督の“獨立時代”とか蔡明亮監督の作品とか、都会の洗練された女性を演じたものが多いと思います。彼女がどこで生まれて育ったのかはよくわからないんですが、大陸出身の田舎で育った女性にどうして彼女を起用したのかが、プログラムを読んだ段階ではわからなかった。映画を観てみて、成功していると思ったんですが、彼女を起用された理由を教えてください。
◆連錦華:本来は、中国から女優さんを選んでこの主役をやっていただきたいと考えていました。しかしまずひとつに、台湾の補助金の問題がありました。この映画の製作に国の補助金をもらうためには、条件として台湾の女優を使うということがあり、そこに引っかかりました。もちろん皆さんは補助金をあてにして製作費を出してくださっていますから、これはやっかいな問題でした。それからもうひとつには、居住者ではない人が台湾で仕事をする場合には許可証が必要で、それにも引っかりました。このように、この映画のヒロインを彷彿させるような問題があり、中国の女優さんを招くことができませんでした。
◆陳湘琪にたどり着くまでにもいろいろな過程がありました。彼女とはいろいろとずいぶん長く話もしました。非常にモダンな方だし、今までのイメージが非常に現代的でそういう役柄が多かったので、まわりからも「なんで彼女なんだ」という疑問をずいぶん持たれました。ただ彼女と話していくうちに、そんなに大きな問題はないだろうと思うようになりました。生まれた場所が違うわけですから、言葉や立ち居振る舞いをもう少し研究しないと問題があるかもしれないので、そのへんを気をつけました。撮影が終わってでき上がってみると、台湾に生まれて育った女優さんですから中国の人と全く同じというわけにはいかないけれども、一応OKなんじゃないかという評価でした。
◆司会:個人的には、とってもフレッシュでとっても自然なナチュラルな感じで、素敵だと思ったんですけれども。


映画人は語る電影萬歳ホームページ
Copyright © 2002-2004 by OKA Mamiko. All rights reserved.
作成日:2002年12月10日(火)
更新日:2004年11月7日(日)